■「ワクチンを打たせたい人」と「絶対打ちたくない人」の対立が根深い根本的理由
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/77099?imp=0
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・ワクチンを強制する米国の仕組み
社会防衛のためのワクチンと個人の病気予防のためのワクチンという二面性を頭に置いて、米国でのワクチンと反ワクチン運動の歴史をみてみよう。
自由を生まれながらの人権とする思想が根本にある米国では、19世紀末の種痘(天然痘ワクチン)の時代から、反ワクチン運動が盛んだった。
その第一の転機となったのが、幾つかの条件を満たす場合に、強制的なワクチン接種の行政権限(ポリスパワー)を認めた1905年の裁判判例だった(ジェイコブセン対マサチューセッツ州)。
しかし、政府主導のワクチンへの反感は強く、その後も実質的には強制でのワクチン接種はあまり行われなかった。
第二の転機は、1960年代後半の麻疹(はしか)ワクチン実用化だった。
麻疹は小児の伝染病だったため、米国政府は、学校の安全を守る(社会防衛)との考え方で、「ワクチン無しなら学校無し」というスローガンを作り、就学時にはワクチン接種証明が必要という仕組みを推奨した。
義務や強制ではないが就学の条件としたのがミソで、子どもへの麻疹ワクチン接種の率は飛躍的に上昇した。
だが、義務ではないため、宗教上や思想信条上の理由によるワクチンの免除を認める州が今でも多く、「みんなにワクチンを打たせたい人」からは不満が出ている。
第三の転機は、1982年放映の米国のTVドキュメンタリー『ワクチン・ルーレット』が、三種混合ワクチン(DPTワクチン、ジフテリア、百日咳、破傷風の予防)の有害作用疑惑を大々的に報じたことだった。
それをきっかけに、接種率は低下し、全米レベルのワクチン被害者団体が作られ、ワクチン企業に対する多くの裁判が起こされ、1986年には小児予防接種被害法が制定された。
この法律は、裁判無しに子どもへの保障を迅速に行うとともに、ワクチン企業を相次ぐ訴訟から保護するためのものだった。
主治医の診断書に基づいてワクチン被害の疑いがあれば、障害を受けた子どもを基金からの支出で救済した。
まれにしか起きないワクチン被害を科学的に証明したり、裁判で決着したりするには時間がかかるので、無過失責任の考え方を取り入れて被害者救済を優先するという政策自体は優れた手法だ。
日本でもよく似た考え方で、予防接種健康被害救済制度、医薬品副作用被害救済制度、生物由来製品感染等被害救済制度が存在している。
・反ワクチンが非科学的と見られる理由
ただし、それには後日談があり、三種混合ワクチン疑惑の元になった研究は1988年には医学的に否定されてしまった。
同じような事件は、新三種混合ワクチン(MMRワクチン、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹の予防)でも生じた。
1998年、新三種混合ワクチンが自閉症(自閉症スペクトラム障害)の発生と関連しているという研究が、英国の医師A・ウェイクフィールドによって発表され、反ワクチンの主張が盛り上がる。
だが、2010年には研究論文が研究不正として撤回され、関連したワクチン被害の訴えは保障を認められなかった。
医学的に否定されているが、ネットなどでは自閉症とワクチンの関連を疑う書き込みを今でも見かけることがある。
こうした研究不正事件が元になった反ワクチンの主張が存在するため、反ワクチンは非科学的との議論があるのだろう。
だが、ワクチンがほんとうに薬害事件を引き置こした例も世界中で数多い。
米国では、黄熱病ワクチンにB型肝炎ウイルスが混入していた事件やポリオワクチンに強毒性ウイルスが混入していた事件がある。
たとえば日本でも、1948~9年にジフテリア予防接種で83名が死亡した薬害事件、1989~93年に新三種混合ワクチンで1800人の無菌性髄膜炎被害のでた薬害事件があった。
ワクチンの安全性に疑問を投げかける主張を、反ワクチンで非科学的と一方的に非難することは、ワクチン被害の悲劇の歴史を無視した非科学的な態度なのである。
医学史家のロバート・ジョンストンは、こうした歴史をまとめた上で、反ワクチンの人も「みんなにワクチンを打たせたい人」のどちらも間違うことがあり、市民社会のなかに100%正しい人間は存在しないのが当然だ、と結論している。
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■「ワクチンを打たせたい人」と「絶対打ちたくない人」の対立が根深い根本的理由
週刊現代(講談社)2020.11.9
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/77099?imp=0
■映画「MMRワクチン告発」日本の配給会社が公開中止を発表
バズフィードニュース(2018年11月7日)
https://www.buzzfeed.com/jp/seiichirokuchiki/vaxxed-has-been-canceled
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MMRワクチン(麻疹・おたふく風邪・風疹の混合ワクチン)と自閉症の発症を関連づける内容が批判されていたドキュメンタリー映画『MMRワクチン告発』の公開中止を、日本の配給元・ユナイテッドピープル株式会社が発表した。
映画は元医師のアンドリュー・ウェイクフィールド氏が監督。
同氏が「米国疾病対策センターがMMRワクチンと自閉症の関連性を示すデータを隠蔽している」という内部告発を受けた生物学者に協力し、調査を行う、という内容だった。
一方、ウェイクフィールド氏は過去に「子どもへのMMRワクチンの予防接種が自閉症の症状を引き起こす」という論文を発表するも、利益相反行為や、患者のデータ・病歴が大幅に書き換えられたり、捏造されたりしていた疑惑が発覚。
ウェイクフィールド氏は医師免許を取り消され、論文が掲載された『ランセット』は論文を撤回している。
このような背景があり、日本での上映にも、医療関係者などから批判が集中していた。
同作の公式サイトによれば、もともと「MMRワクチンと自閉症の因果関係の有無について科学的な証明がなされていないことを承知」した上で、映画の主張に「合理性がある」としていた。
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■映画「MMRワクチン告発」日本の配給会社が公開中止を発表
バズフィードニュース(2018年11月7日)
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