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日銀金融緩和で刷られた円の行き先が日本企業でも日本国民でもないカラクリ(Dr.苫米地 2016年9月15日TOKYO MXバラいろダンディ) https://www.youtube.com/watch?v=tvzNqO6qsGI

■ロッキード事件の「真の巨悪」は田中角栄ではなかった 米高官・CIAを後ろ盾に暗躍した「元戦犯容疑者」たちを徹底究明 クーリエ・ジャポン(講談社) 2020.10.31

ロッキード事件の「真の巨悪」は田中角栄ではなかった

米高官・CIAを後ろ盾に暗躍した「元戦犯容疑者」たちを徹底究明

クーリエ・ジャポン(講談社) 2020.10.31

https://courrier.jp/news/archives/216989/


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日本人の心に、強烈な印象を残した田中角栄

ロッキード事件で、逮捕・起訴され、一、二審で実刑判決を受けて政治生命を絶たれ、病にも倒れて、鬼籍に入った。

しかし、この事件には、未解明の重大な疑問が残されている。

当時、ほとんどの日本人は田中が現職の首相時代に犯した犯罪だから、田中が「巨悪」だと受け止めていた。

だが、本当の巨悪は他にいて、断罪されないままになっているのだ。

田中訴追に直接関係する証拠は米国司法省から東京地検特捜部に引き渡され、法の裁きを受けた。

しかし、巨悪解明につながる証拠は提供されなかった。

アメリカは、なおその証拠を秘匿している。

戦後最悪の国際的疑獄となった、この事件。

昭和から平成、さらに令和の時代を迎えた今も、真相を紡げないまま、歴史のかなたに葬ってしまっていいのか、と痛切に感じる。

田中角栄の逮捕から40年たった2016年、田中に関する書籍や記事、テレビ番組が相次ぎ、角栄ブームにもなった。

かつての政敵の一人、石原慎太郎(いしはらしんたろう)が著した小説『天才』(幻冬舎)やNHKスペシャルなど、ドキュメンタリー番組も話題になった。

その中で、朝日新聞編集委員の奥山俊宏(おくやまとしひろ)が書いた『秘密解除 ロッキード事件』(岩波書店)は、新しい取材に挑戦し、米国の公開文書を系統的に点検していた(1)。

この本が出版された時、私はひやっとした。

奥山は、ロッキード事件に関する米国政府機密文書を発見して、2010年から朝日新聞に何度かスクープ記事を書き、本と同じタイトルの特集記事もまとめていた。

正直に打ち明けると、私は同じテーマで、彼に先駆けて、2005年から取材を開始し、関係文書を大量に入手していた。

その中には、奥山に先に報道された文書もある。

だが、まだ私の取材は全部終わっていなかった。

先に出版されてしまえば、それまでの長年にわたる取材が無に帰してしまう、と恐れていた。

案の定、彼の本が先に出版された。親切にも彼は著書を贈ってくれたので、慌てて読んだ。
意外にも、私の心配は杞憂(きゆう)だった。

 

キッシンジャー角栄を嫌った理由を突き止めた


彼が、アメリカの公文書を取材した意義は大きい。

しかし、多くの未解明の疑問に対する答えを出していなかった。

この著書の副題「田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか」という問いは、疑問符のまま残されている。

キッシンジャーは、政策ではなく、その人格の側面から田中を蛇蝎(だかつ)のごとく嫌っており、その意味で田中は米国の『虎の尾』を踏んでいたと言える」と奥山は書いている。

しかし、真相はそんなことではなかった。

田中がアメリカに嫌われた真の理由、それを初めて明らかにする。

ロッキード事件は、第一段階で田中首相在任時の日米関係、第二段階で事件発覚から捜査、裁判に至る経緯、と二つの段階から成り立っている。

これまで、二つの段階の間に重大な因果関係があったことを解き明かした著作はなかった。
それを解明することによって、初めて事件の真相が見えた。

つまり、田中が政治的に葬られた理由は彼の外交にあったのだ。

 

・Tanaka文書の経緯を逐一追う

 

次々と出版された類書から大幅に遅れながら、あえて拙著『ロッキード疑獄』を上梓(じょうし)したのは、ロッキード事件の新しい歴史を刻むことができたと考えたからだ。

事件解明の最大の壁は、事件が「アメリカ発」であり、米国政府から捜査資料を入手しなければ、捜査は不可能という現実だった。

捜査資料とは、全部で5万2000ページ以上、ロッキード社が保管していた秘密文書のことだ。

最終的に、東京地検特捜部が入手したのは、そのうち2860ページだった。

本書では、これらの文書が辿った複雑な道のりと関連の動きを、逐一、丹念に追うことによって真相を追究する手法を取った。

田中の運命を決したこれらの文書は、どのような経緯で東京地検特捜部にたどり着いたのか。

文書の中には、確かに「Tanaka」ないしは「PM」(Prime Minister=首相=の略)と明記した文書があった。

特捜部の捜査をリードした堀田力(ほったつとむ)も、そのことを認めている。

これらの文書は、田中や丸紅、全日空両社の首脳らの逮捕、起訴、裁判の過程で、活用された。

 

・巨悪の正体

 

しかし、アメリカは田中関係の文書とは対照的に、「巨悪」に関する情報の公開を阻んでいる。

「巨悪」は訴追を免れたが、その全体像は、ロッキード事件の三年後に発覚したダグラス・グラマン事件も含めた取材で、浮かび上がった。

その正体とは、どんな人たちなのか。

日本では、おぞましい人たちが姿を現した。

戦前・戦中は軍国主義を突き進み、終戦直後に「戦犯容疑者」として連合国軍総司令部GHQ)に逮捕され、巣鴨(すがも)拘置所に勾留されたものの、起訴を免れ、釈放された「紳士」たちだ。

アメリカでは、彼らを生き返らせて、表舞台に復帰させた「フィクサー」らが暗躍した。

その後ろ盾に、米国の軍部と軍需産業から成る軍産複合体が控えていた。

東西冷戦の激化で、アメリカは日本を「反共の砦」として、経済的に繁栄させるため、これらの元戦犯容疑者たちを復活させた。

日米安全保障体制を強化するため、アメリカは1950年代以降、自衛隊に高価な米国製の武器・装備を導入させた。

その「利権」を分け合った日米の黒いネットワークが露呈したのが、ダグラス・グラマン事件であり、ロッキード事件だったのだ。

事件の主役は、日米安保関係の根幹に巣くう人脈であり、彼らを「巨悪」として訴追すれば、安保体制は大きく揺らぐところだった。

事件を表面化させたアメリカ上院外交委員会多国籍企業小委員会(チャーチ小委)のジェローム・レビンソン首席顧問は、事件が「インテリジェンスの分野に入ってしまったので、チャーチ小委の調査も終わってしまった」と筆者に語った。

この証言は、日米安保関係の秘密の部分に調査のメスを入れることができなかった事情を雄弁に語っている。

「巨悪」のグループには、米国の軍産複合体のほか、米中央情報局(CIA)も含まれている。

日本の元戦犯容疑者たちは、CIAの協力者としても暗躍したのである。

 

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ロッキード事件の「真の巨悪」は田中角栄ではなかった
米高官・CIAを後ろ盾に暗躍した「元戦犯容疑者」たちを徹底究明
クーリエ・ジャポン(講談社) 2020.10.31
https://courrier.jp/news/archives/216989/