■安倍政権、強硬に水道の事実上完全民営化を進める背景…“外資支配”に貢献する麻生太郎副総理
exciteニュース(エキサイトニュース)2019年2月3日(Business Journal)
https://www.excite.co.jp/news/article/Bizjournal_mixi201902_post-14427/
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2018年12月6日、国会で「改正水道法」が可決・成立し、同月12日に公布された。
同法は公布日から1年以内に施行される。
かつて「水道民営化」で水質悪化や料金値上げなどにあえいだ諸外国は、民間企業と契約して数十年を経たのち、続々と「再公営化」に向かった。
それらの失態を見聞きした日本の世論は、今回の法改正が「水道民営化への扉を開く」と反発したが、安倍晋三内閣は「そもそも民営化ではない。
水道管の老朽化対策には官民連携による民間資金の活用が必要」と押し通し、法案を強行採決した。
実は、改正水道法の条文にはカラクリがある。
本稿では、ほかの周辺法や制度と連動して仕込まれた法改正の急所と狙いを、懸念される「民営化」や「外資支配」の虚実とともに数回に分けて明らかにする。
・厚労省が「すべての管路改修に130年」と試算
日本の水道普及率は97.9%。
管路(水道管)の総延長距離は地球16周分の66万㎞。
有収水量は1日で約3600万立法メートル(厚生労働省が17年にまとめた資料より抜粋。以下同。「有収水量=料金徴収対象の水量」は15年実績)。
その水質は極めて高く、水道管は原則として人が住む全国の隅々にまで行きわたり、利用料金も低額で安定している。
まさしく世界に誇る水道インフラだ。
水道は水を運ぶ社会基盤である。
水は空気とともに生存に直結するため、その公益性は数あるインフラのなかでもっとも高い。
そのため、水道事業はこれまで個別委託を除けば「営利事業」から隔てられ、地域住民の生活を守るべき自治体などの公的主体が経営してきた。
国内で人や企業が使う水は、海水を淡水化した人工の水を除けば、水源となるダムや川から取水される。
そこから導水管を通って水道用水が浄水場に運ばれるまでの供給事業数は92。
浄水場から配水池へと流れ込み、配水管で各地域に送られた水が給水管を通じて利用者に届けられる。
配水池から先の供給事業数は上水道が1355、簡易水道が5133。
これらを担う事業体は、従来から個別業務を民間にも委託してきた。
厚労省は、水道の現状をまとめた資料で「管路の法定耐用年数は40年」「改修を要する年間更新率は全国平均で約0.75%」と報告した。
この更新率で100%を割れば133.3。
厚労省は「全ての管路改修を終えるまでに130年かかる」と試算している。
水道事業関係者は、老朽化した水道管の改修費を1億円超/kmと見積もっている。
同資料に管路総延長中の必要更新比率が明記されているということは、国や自治体、個々の事業体が、経年劣化する管路に改修が必要なことを承知していたということだ。
それにもかかわらず、将来の設備投資としてそのコスト試算を組み込んでこなかったのはなぜか。
生存に欠かせない公共サービスを財政難を理由に放り出せば、政府や自治体の存在意義は失われる。
従って、その維持・管理・運営に要する予算措置は当然、最優先されねばならない。
利権優先で無駄なハコモノや天下り用の特殊法人を量産したり、自国の財政事情を承知で莫大な金を国庫から海外支援にばらまいたりすれば、納税者の金が水道改修のような公益事業に回せなくなるのは自明の理だ。
・麻生太郎の「日本の水道は民営化します!」発言
18年暮れに成立した改正水道法は、サービスの劣化を招く民営化につながるとの強い批判を浴びた。
しかし、安倍内閣は「改正水道法は民営化などではなくコンセッション方式である」「民間企業のノウハウを活用してコストダウンすれば水道料金が抑えられるし、老朽化した水道管の改修費も出てくる」として世論の批判を一蹴し、法案を強行採決した。
コンセッション方式とは、自治体などの公的主体が公共施設を所有したまま、料金収受業務を含む包括的な「運営権」を企業に売却する仕組みだ。
東日本大震災が勃発した11年、「改正PFI法」(PFI=プライベート・ファイナンス・イニシアティブ/民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)が成立し、コンセッション方式による契約が実施可能となった。
政府は水道民営化を否定する。
だが、この改正PFI法(以降、本稿では便宜上「旧PFI法」と呼称する)を法的根拠とする水道事業のコンセッション契約は、運営だけでなく施設も売却する「完全民営化」にもっとも近く、それは「事実上の民営化」である。
なぜなら、施設所有権が自治体に残されても、運営権を長期的・包括的に握る民間企業が日常的にもろもろを決定すれば、それは実態としての「経営」そのものだからだ。
検針や浄水場管理など個別業務の委託は従来から行われてきたが、コンセッション方式はまったく次元の異なるものなのである。
改正水道法への反対世論には、再公営化する海外の経過を見て「日本の水も民営化で外資に支配されるのではないか」との不安が含まれていた。
その不安を煽った張本人が、安倍内閣で金融担当の内閣府特命担当大臣や財務大臣など要職を担う麻生太郎副総理である。
すでに広く知られた麻生氏の発言「日本の水道は民営化します!」は、改正水道法の狙いを検証する上で欠かせないトピックでもある。
講演の前段も加えて、ここで正確に再録しておこう。
13年4月19日(米国東部時間)、米国本拠の民間シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」の会見に登壇した麻生氏は、満面の笑顔で開口一番「麻生太郎です。私も戻ってきました!」とあいさつし、米国産業が関心を抱きそうな日本のさまざまな市場について“報告”した。
講演後、質疑応答の後半で麻生氏が得意げに宣言したのが水道民営化である。
以下は、そのときの発言を文字に起こしたものだ(用語の重複や接続詞は筆者が一部加工。それ以外の名詞や数字などは原文ママ)。
「……水道とかいうものは、世界中ほとんどプライベートの会社が運営しておられますが、日本では自治省以外では扱うことはできません。水道料金を99.99%回収するシステムを持っている国は日本の水道会社以外にはありませんけれども、この水道はすべて、国営もしくは市営、町営でできていて、こういったものをすべて民営化します! いわゆる公設民営などもアイデアとして上がってきつつあります」
講演冒頭の「戻ってきた」が「米国に」なのか「CSISに」なのかはよくわからないが、それはある意味で、質疑応答で洩らした「民営化宣言」以上に衝撃的だと受け取る国民も少なくないのではないか。
水道の分野でコンセッション方式による国内初となった成約事例が、静岡県浜松市とフランスのヴェオリア社を代表とする6社連合(ヴェオリア・ジャパン、ヴェオリア・ジェネッツ、JFEエンジニアリング、オリックス、須山建設、東急建設)の特別目的会社HWS(浜松ウォーターシンフォニー)との「下水道コンセッション」である。
HWSが運営するのは、浜松市内で下水5割を処理する終末処理場の西遠浄化センターやポンプ場など。契約書に記載された契約期間は17年10月30日から38年3月31日の約20年間。
同市と運営権者HWSが合意すれば、最長で43年3月31日まで延長される。
期間中に同市が得る運営権対価は25億円だ。
仏ヴェオリア社は、周知のように「水メジャー」として知られるフランス本拠の多国籍巨大企業。
水処理では世界最大手だ。
同社のような水メジャーの多くは欧米本拠である。
麻生講演の質疑応答で、隣に座る米CSIS日本幹部を気にしながら麻生氏が「戻ってきて報告した面々」は、同社をはじめとして日本の水道インフラ市場に業務委託その他のかたちですでに広く深く潜り込んでいる。
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■安倍政権、強硬に水道の事実上完全民営化を進める背景…“外資支配”に貢献する麻生太郎副総理
exciteニュース(エキサイトニュース)2019年2月3日
https://www.excite.co.jp/news/article/Bizjournal_mixi201902_post-14427/
■水道民営化のウラに…麻生財務相“身内に利益誘導”の怪情報
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/243479
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10日閉幕した臨時国会で、安倍政権が強行成立させた「水道民営化法」を巡り、かねて民営化を推進してきた内閣府に“水メジャー”の仏「ヴェオリア」の日本法人社員が出向していたことが発覚。
「利益誘導だ」と批判が噴出したが、実は「麻生財務相も一枚かんでいるのでは」との怪情報がSNS上で飛び交っている。
日刊ゲンダイは真相を追った。
〈水道民営化して(麻生の)娘は大儲け〉――。
ネット上には今、こんな投稿があふれ返っている。
まず、麻生氏の娘についてだが、フランス人男性と結婚したのはまぎれもない事実。
「週刊文春」(2014年1月30日号)によると、麻生氏の娘は、同年1月中旬に結婚お披露目会をパリで開催した。
会場は、フランスで200年以上の歴史を持つ5つ星ホテル「ル・ムーリス」。
両家と近しい関係者約30人が参加した夕食会は、ルイ15世の寵愛を受けた公妾の肖像画が飾られている「ポンパドゥール夫人の間」だった。
麻生氏の娘は東大文学部で美術について学び、卒業後、イギリスの大学に留学。
フランス人の夫とは、美術品のオークションなどを手掛ける会社に勤めてから知り合ったという。
・野党議員の追及に色をなして反論
一方、夫がヴェオリアに勤めているかどうかは真偽不明だ。
事実を裏付けるだけの情報を得ることはできなかった。
ただ、妙な疑いを持たれているのは、麻生氏の過去の発言が原因となった可能性が高い。
麻生氏は、娘の結婚お披露目会の約9カ月前、13年4月に米国のシンクタンク「戦略国際問題研究所」の講演で、「(日本の)水道はすべて国営もしくは市営・町営でできていて、こういったものをすべて民営化します」とぶち上げたのだ。
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■水道民営化のウラに…麻生財務相“身内に利益誘導”の怪情報
日刊ゲンダイ(講談社)2018/12/12
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/243479
■世界「3大水メジャー」がついに「一強」になった歩みと今後の展開や懸念
ヤフーニュース(2020/5/17)
https://news.yahoo.co.jp/byline/hashimotojunji/20210517-00238333/
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・水ビジネスの巨人「ウォーター・バロン」と言われた2社
水ビジネス世界大手仏ヴェオリアが、同業仏スエズを買収することで最終合意したと発表した。
買収総額は約260億ユーロ(約3兆4000億円)。
売上高約370億ユーロの巨大企業が誕生する。
「仏ヴェオリアがスエズ買収で合意 3兆4千億円」(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR150CH0V10C21A5000000/
ここでは水ビジネスの巨人「ウォーター・バロン」と言われた2社の歩みを振り返る。
・日本にも進出しているヴェオリア
ヴェオリアは、仏リヨン市で1853年に創業したジェネラルデゾー社が母体となっている。
フランス共和国の第二帝政時代、ナポレオン三世は都市部の水道システムを運営する民間企業が必要と考え、勅令によって誕生した。
事業は上下水道に止まらない。
1960代以降、廃棄物処理やエネルギーも取り扱い、いわゆるライフライン事業を主体にしている。
1980年代以降、通信・メディア事業、都市交通などにも進出したが、現在は本業に集中する方向だ。
2019年のグループ連結売上高は271億ユーロ(約3兆4200億)で、水部門が41%、廃棄物部門が37%、エネルギー部門22%という比率だ。
日本にも進出しており、西原環境(エンジニアリング)、ジェネッツ(料金徴収・顧客サービス)、フジ地中情報(漏水管理・料金徴収)などを傘下に収め、上水道事業や廃棄物処理の業務を行っている。
2019年度は、69か所の浄水場運転、80か所の下水処理上運転、180自治体の料金徴収、999件の漏水調査受託を行っている。
現在宮城県で進む水道事業のコンセッションにおいても、ヴェオリア・ジェネッツ社は運営候補グループのなかの1社である。
・スエズ運河とも縁あり
スエズは、もともと1880年に創業したリヨネーズ・デソーという企業で、水道と電力を事業の柱にしていた。
フランス国内の建設会社と合併してリヨネーズデゾー・デュメズとなった後、スエズ運河の建設・運営会社であるスエズと合併し、スエズ・リヨネーズデゾーとなった。
その後、グループ内の再編、建設部門の売却などを経て、スエズ・エンバイロメントとなった。
2006年にはイタリアの電力大手エネルから敵対的買収を仕掛けられた。
これに対し、ドビルパン仏首相(当時)は、「フランス企業を守れ」のスローガンを掲げ、スエズ買収を阻止すべく、フランスのガス公社(GDF)との合併を主導した。
国営企業と民間企業の合併ゆえ、労務問題や利益配分、支配権の確立など数多くの難題があり交渉は難航したが、2007年5月に就任したサルコジ大統領(当時)が先頭に立ち、急転直下で合併合意にこぎつけた。
電力事業はGDFに移し、GDF傘下のスエズ・エンバイロメント(水道・廃棄物事業)となった(2016年4月に再度スエズに社名変更)。
2019年度の年間売上げは、連結売上高は180億ユーロ(約2兆2700億円)で、水部門56%、廃棄物部門44%という割合になっている。
日本での事業活動はないが、水道事業のコンセッション等の獲得に向け、2018年12月に前田建設と共同取組を行う覚書を締結している。
・2大水メジャーがフランス企業である理由
両者ともフランス企業だが、偶然ではない。
フランスは自治体の規模が小さく、人口6500万人に対し、自治体数は3万7000ある。
9割の自治体の人口は2000人足らず。そのため自治体は、都市交通、廃棄物の収集や処理、上下水道などの行政サービスを独自に行うことができず、民間企業に任せてきた。
シラク元大統領はパリ市長時代に、市内をセーヌ川で二分し、片方の水道事業をヴェオリアに、もう片方をスエズに任せた。
その結果、両者は水道事業のノウハウを蓄積することができた。
転機が訪れたのは1980年代。
フランスの国内上下水道市場が飽和した。
そこで大統領のトップ外交によって海外進出を図った。
ヴェオリア、スエズは先行者の利を活かし、世界の民営化された水道事業のほとんどを握り、「水メジャー」「ウォーターバロン(水男爵)」などと呼ばれた。
かつては「3大水メジャー」といわれ、英国のテムズウォーターを含んだが、現在同社は国内に特化して事業を行っている。
ヴェオリア、スエズの「2大水メジャー」だったわけだが、今回の買収によりついに世界最大の水メジャーが誕生した。
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■世界「3大水メジャー」がついに「一強」になった歩みと今後の展開や懸念
ヤフーニュース(2020/5/17)
https://news.yahoo.co.jp/byline/hashimotojunji/20210517-00238333/
■スエズ運河のコンテナ船座礁事故 1日1兆500億円の海上輸送を止める サプライチェーンの弱点再び
Yahoo!ニュース 2021/3/27 木村正人 | 在英国際ジャーナリスト
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20210327-00229587/
■宮城県、水道運営権を民間に売却へ 上下水道含めた委託は全国初
毎日新聞 2021/7/5
https://mainichi.jp/articles/20210705/k00/00m/040/209000c
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宮城県議会は5日、上下水道と工業用水の20年間の運営権を民間に売却する「みやぎ型管理運営方式」の関連議案を賛成多数で可決した。
上水道を含めた3事業一括の民間委託は全国初で、県は2022年4月の事業開始を予定する。
県は引き続き施設を所有し、水質管理や経営監視も行うとしている。
議会には、水処理大手メタウォーター(東京)やフランスのヴェオリアグループの関連企業など10社で構成する企業グループに運営権を設定する議案のほか、グループの財務状況などを議会に報告するよう求める条例も提出され、可決・成立した。
水道3事業の運営権だけを民間に売却する「みやぎ型」を巡っては、人口減や設備の老朽化による利用者の負担増を抑えるためとして、村井嘉浩知事が中心となって推進。
外資系企業の参入に対する不安や運営形態が不明確との声もあり、導入に反対する市民団体が約2万筆の署名を集めた。
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■宮城県、水道運営権を民間に売却へ 上下水道含めた委託は全国初
毎日新聞 2021/7/5
https://mainichi.jp/articles/20210705/k00/00m/040/209000c
2012年3月13日
https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1302A_T10C12A3000000/
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世界最大の水事業会社であるフランスのヴェオリア・ウォーターの日本法人、ヴェオリア・ウォーター・ジャパン(東京都港区)が2012年4月から、松山市の浄水場の運転業務などを始める。
外資系企業が単独で日本の自治体の水道業務を受託するのは初めて。
ヴェオリアが手掛けるのは、市之井手や垣生など4カ所の浄水場の運転や設備の維持管理などの業務。
このほか、公共側が資金を調達して民間企業に建設や維持管理を委託する「DBO(Design Build Operate)」方式によって栗田工業などが建設した高井神田浄水場とかきつばた浄水場の配水業務なども担う。
松山市が2011年8月~11月に実施した公募型プロポーザルを経て、12月26日に市と契約した。
契約期間は2012~2016年度の5年間で、受託金額は12億9654万円。
ヴェオリアが関わる6カ所の浄水場の給水量は1日当たり計14万t(給水能力は計20万t)。
松山市の給水区域のほぼ全域をカバーし、人口の9割強に当たる約48万人に水を供給する。
同社が日本の自治体から受託した水道業務のなかでは最大規模となる。
これまで松山市では、三菱商事などが出資するジャパンウォーター(東京都千代田区)が水道業務に携わってきた。
2004~2006年度に垣生浄水場、2005~2006年度に市之井手浄水場、2007~2011年度に両浄水場で、それぞれ運転業務などを受託。
同社は、2012年度以降も業務継続を目指してプロポーザルに参加したが、一騎打ちとなったヴェオリアに技術面やコスト面で敗れた。
日本の水道市場の規模は2兆~3兆円と言われる。
松山市のケースを機に、ヴェオリアをはじめとする海外勢と日本勢との競争が激化する可能性がある。
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■外資が水道事業で攻勢、仏ヴェオリアが松山市から受託
2012年3月13日
https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1302A_T10C12A3000000/