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日銀金融緩和で刷られた円の行き先が日本企業でも日本国民でもないカラクリ(Dr.苫米地 2016年9月15日TOKYO MXバラいろダンディ) https://www.youtube.com/watch?v=tvzNqO6qsGI

なぜコロナで保健所は機能不全に陥った?「行政改革」による人員削減、国の費用負担廃止~保健所、機能不全が深刻化…“行政改革”で大幅削減、PCR検査の目詰まりの元凶~

 


■保健所、機能不全が深刻化…“行政改革”で大幅削減、PCR検査の目詰まりの元凶

Business Journal 2020.06.24

https://biz-journal.jp/2020/06/post_164159.html


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今、新型コロナウイルス感染拡大が日本中を震撼させているなかで、保健所の機能不全という問題が浮き彫りになっている。

新型コロナ感染経路の解明やPCR検査の実施に、保健所が中核的な役割を担っていたが、クラスターの感染経路追跡は進まず、PCR検査の数も低迷して、先進国のなかでも最低の検査水準に陥っていた。

 
これには、政府の専門家会議の尾身茂副座長も「保健所の職員が疲弊している。保健所のクラスター態勢を強化していれば」(4月6日付朝日新聞デジタル)と指摘。

さらにPCR検査が低迷している原因についても「厚労省幹部は『実施件数が伸びない要因の一つは保健所の人員不足もある』と認める。


政府関係者は『東京の検査数が伸びないのは、保健所がパンクしているからだ』と言い切る」(同)と政府関係者も保健所の人員不足がその原因と認めている。

 
厚生労働白書(2018年版)によれば、保健所数は2005年の549から17年の481へ12.3%も減少している。

都道府県でも411から363、保健所設置市も115から95へと減少している。

このようななかで、都道府県の保健師数も05年の4014人から16年には3661人と約1割減少している。

 
その背景には、1980年代の「臨調行革」路線の下、社会保障制度の全面的な見直しが行われ、94年には「保健所法」が全面改正され、「地域保健法」に改称されたことがある。

これにより保健所の統廃合など公衆衛生全般の見直しが始まった。


・食の安全安心の確保も保健所の役割


保健所は、食中毒や残留農薬問題にかかわる食品衛生法も所管をしている。

保健所に配置されている食品衛生監視員が、食品衛生法に基づく監視指導を行っている。


しかし、保健所の専任の食品衛生監視員は、統計がわかる範囲で2000年の1659人から12年の1279人へ380名、23%も減少している。

 
12年時点で専任の食品衛生監視員がいない府県は全国で以下の19府県におよぶ。


【専任の食品衛生監視員がいない府県】

山形県茨城県群馬県富山県、石川県、福井県三重県滋賀県京都府奈良県和歌山県島根県徳島県愛媛県高知県佐賀県大分県、宮崎県、沖縄県
 

さらに食品衛生法の所管となっている政令指定都市でも、さいたま市横浜市相模原市京都市、神戸市、広島市で専任の食品衛生監視員がゼロである。

 
これらの府県や政令市では、兼任の食品衛生監視員が食品衛生法遵守の監視指導を行っている。


保健所に配置されている医師や看護師や獣医師、保健師などが兼任で行っているのだが、09年のデータでは、兼任の食品衛生監視員のうち31%しか「主に食品衛生監視業務」に従事していないとされている。


まさに、片手間で食品衛生監視業務がなされているのである。

このような状況のなかで新型コロナウイルスの感染が全国に広がり、人員不足の保健所を直撃したのである。


人員不足でクラスターの感染経路追跡は進まず、PCR検査も低迷しているなかで、兼任の食品衛生監視員が新型コロナ対応に追われる。

専任の食品衛生監視員がいない19府県6政令市では、食品衛生法遵守の監視指導はほとんど行われない事態となっている懸念がある。


まさに食の安全が危機的な状況に直面しているのである。

食の安全を確保するためにも、保健所の機能強化は待ったなしである。


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■保健所、機能不全が深刻化…“行政改革”で大幅削減、PCR検査の目詰まりの元凶
Business Journal 2020.06.24
https://biz-journal.jp/2020/06/post_164159.html

 

 

 

 

 

■なぜコロナで保健所は機能不全に陥った?「行政改革」による人員削減、国の費用負担廃止

Business Journal 2020.11.20

https://biz-journal.jp/2020/11/post_191392.html


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新型コロナウイルスの第3波ともいえる感染拡大が続くなか、感染症対策の中核を担うべき保健所の苦難は続いている。

人手不足と保健所の設置数減少が重なり、働いている方々の過重労働も解消されていない。

保健所職員の拡充の必要性は与野党とも認識しているが、その取り組みははかばかしくない。

 
いったい、なぜこのような事態に陥ったのか。

歴史的に見てみよう。
 

保健所は、1947年に憲法25条の国民の生存権保障に基づき制定された保健所法で、国の責任で国民の公衆衛生の向上・増進を図ることを目的に「人口10万人に1カ所」の基準で設置されてきた。


この保健所法は、保健所の無料利用の原則を規定するとともに、施設または設備に要する経費及び保健所の運営に要する経費の国の負担を明記していた。

この状態が続いていれば、現在のような混乱は防げていたといえる。

 
しかし、81年の第二次臨時行政調査会の答申で保健医療に関して疾病の自己責任、国庫補助の引き下げ、民間活力の導入などが提言されたのを受けて、84年には保健所法を改正して、保健所運営費を従来の定率補助方式から定額補助方式に変更し、国庫負担の削減を進めた。


85年には、「地方行革大綱」に基づいて保健所の統廃合、人員の削減、業務の民間委託が進められた。


1989年には総務庁の行政監察「保健衛生に関する行政監察結果に基づく勧告」が出され、そのなかで保健所業務の民間委託化、保健所の縮小及び廃止、業務の市町村への移管、監視・検査業務の特定保健所への集中化を打ち出したのである。

 
これを受けて始まったのが、「地域保健対策強化のための関係法律の整備に関する法律案」策定の検討作業であった。


そして94年に政府は、保健所に対する財政支出を減らすことを主な目的に保健所法という名称を地域保健法に変え、保健所の削減・再編を進める「地域保健対策強化のための関係法律の整備に関する法律案」を国会に提出して成立させたのである。

 
この法律の下で保健所の削減・再編、国の保健所運営に関する経費負担の廃止と市町村への負担の転嫁、市町村保健センターへの権限委譲が進められた。

96年に845あった保健所数は97年には706と、1年で139も削減されたのである。


・「新しい時代の感染症対策について」


このような怒涛のような保健所削減の一方、97年12月に厚生労働省の公衆衛生審議会は、報告書「新しい時代の感染症対策について」をまとめ公表した。


「保健所は、地域における感染症対策の技術的専門組織として市町村への情報提供・指導に当たるべき役割を担うべきであることは言うまでもない。新しい時代の感染症対策においては、(略)地域における感染症対策の中核的機関としての位置づけを明確にすべきである」


都道府県においては、中期的な課題として保健所に疫学(特に感染症の疫学)の専門家を配置する等の取り組みを進めることにより、実際に患者発生があった場合の必要に応じての積極的疫学調査を迅速かつ効果的・効率的に行えるように体制整備を進めていくことが期待される」

 
このような公衆衛生審議会の提案も保健所機能の強化には結び付かず、人員の削減、保健所の削減は続いたのである。


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■なぜコロナで保健所は機能不全に陥った?「行政改革」による人員削減、国の費用負担廃止
Business Journal 2020.11.20
https://biz-journal.jp/2020/11/post_191392.html