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日銀金融緩和で刷られた円の行き先が日本企業でも日本国民でもないカラクリ(Dr.苫米地 2016年9月15日TOKYO MXバラいろダンディ) https://www.youtube.com/watch?v=tvzNqO6qsGI

【閣議決定ってなに?「国会なんていらないじゃん?」】閣議決定が独裁への道へ!?「閣議決定で何でも決まる」日本の民主主義が崩壊しようとしている!~独裁国家をつくったナチス・ヒトラーの手口~


■防衛費増額、安定財源遠く 政府が確保法案を閣議決定

日本経済新聞 2023年2月3日 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA036A90T00C23A2000000/


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政府は3日、防衛費増額に向けた財源確保法案を閣議決定した。

財源に充てる税外収入をためる「防衛力強化資金」の設置を盛った。


特別会計の剰余金など約1.5兆円の税外収入を特例的に確保する規定も明記した。

これらを防衛費の増額に充てれば、他の経費の財源は減る。

政府の債務が膨らむ恐れもある。


病院を運営する2つの独立行政法人の積立金から、計746億円を本来より前倒しで国庫に返納させる。

政府の投融資を管理する「財政投融資特別会計」から2000億円、為替介入に備える「外国為替資金特別会計」から1.2兆円を一般会計に繰り入れる。


これらを防衛力強化資金にため、複数年度かけて使う。

法案で手当てする1.5兆円とは別に、政府は国有財産売却などで3.1兆円ほどの税外収入の確保も見込む。

計4.6兆円のうち2023年度に1.2兆円を使い、残りは24年度以降の防衛費の増額分に充てる。


政府は今後5年間の防衛費の総額を43兆円とした。

40.5兆円は毎年度の当初予算で手当てする。


22年度当初の5.2兆円の5年分(25.9兆円)から14.6兆円程度の上積みとなる。

税外収入で4.6兆?5兆円強、決算剰余金の活用で3.5兆円程度、歳出改革で3兆円強をまかなう。

残りを24年以降の増税で確保する。

具体的な実施時期は決まっていない。


税外収入は本来、一般会計全体で使えるはずのお金だ。

他の経費に充てる財源は減り、税収が増えなければ新規国債で穴埋めすることになる。


決算剰余金も年度途中の補正予算の財源に充てるケースが目立つ。

これまで通りの補正編成を続ければ、新たな国債発行が必要となる。


自民党増税以外の財源確保策を検討する特命委員会を1月に立ち上げた。

国債の「60年償還ルール」の見直しを求める意見がある。

歳出改革で他の政策経費が削られることへの懸念も出ている。


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防衛費増額、安定財源遠く 政府が確保法案を閣議決定
日本経済新聞 2023年2月3日 
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA036A90T00C23A2000000/

 

 

 

 

 

■安保3文書の閣議決定を批判 立憲デモクラシーの会の憲法学者ら声明

朝日新聞 2022年12月23日 北野隆一

https://www.asahi.com/articles/ASQDR6G6LQDRUTIL021.html


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敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を含む国家安全保障戦略(NSS)など安保関連3文書が閣議決定されたことに対し、憲法学者政治学者らでつくる「立憲デモクラシーの会」が23日、国会内で記者会見し、「防衛政策の転換は東アジアにおける緊張を高め、軍拡競争を招く」と批判する声明を発表した。


同会は声明で「先制攻撃と自衛のための反撃は区分が不明確。敵基地攻撃能力の保有専守防衛という日本の防衛政策の基本理念を否定する」と指摘した。


防衛費増額についても「GDP国内総生産)比2%という結論に合わせた空虚なもの」として「税負担の増加は国民の疲弊を招く」と批判した。


手続き面でも「国会で説明せず内閣と与党だけで重大な政策転換を行った」として「国民不在、国会無視の独断」と断じた。


憲法学者の長谷部恭男・早稲田大教授は「なぜ軍拡を進めるのかについて、安全保障上の必要性や合理性に関する説明が欠けている」と批判。


政治学者の中野晃一・上智大教授も「国会で説明せず、閉会後に独断でなし崩し的に閣議決定した。2014年に安倍政権が集団的自衛権の行使容認を閣議決定だけで決めた手法が、いよいよ先鋭化している」と述べた。(編集委員・北野隆一)


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安保3文書の閣議決定を批判 立憲デモクラシーの会の憲法学者ら声明
朝日新聞 2022年12月23日 北野隆一
https://www.asahi.com/articles/ASQDR6G6LQDRUTIL021.html

 

 

 


国葬を強行「閣議決定」今さら聞けない基本の基本

法的根拠なく国会のチェック働かず暴走の恐れも

東洋経済 2022/09/12 尾藤 克之 : コラムニスト、明治大学客員研究員 

https://toyokeizai.net/articles/-/617672


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9月27日に予定されている安倍晋三・元首相の国葬への批判の一つに、「閣議決定だけで早々に決めた」ことがあります。


政府の意思決定の会議のことを閣議といいます。

首相、すべての閣僚の意思決定手段のなかで、最上位に位置づけられるのが「閣議決定」となります。


もう少し厳密にいえば以下の通りとなります。


内閣総理大臣及びその他の国務大臣をもって組織する合議体たる内閣の会議(閣議)で内閣の権限事項を決定することであり、憲法又は法律が内閣の意思決定を当然必要としている事項、例えば、法律案及び政令の決定は例外なく閣議決定の方式によること。また、特に法令上の根拠がなくても、重要な政策に関する事項は閣議決定で決められることが多くなっています」(参議院法制局ホームページより)。


実は安倍政権以降、閣議決定が連発されているのをご存じでしょうか。

 

閣議決定は全会一致が原則


安倍政権は「危機管理に強い」と言われていました。

有事に即応できる危機管理能力を重視してきたと思われていました。


しかし、新型コロナ対策の初動に遅れが出ていたことは周知の事実です。

この時、速やかな意思決定を行うため閣議決定が連発されました。


マスクやティッシュ、消毒液がスーパーの売り場から消えた時、政府は新型コロナウイルス感染症新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象とする同法改正案を閣議決定したことがあります。

翌日の内閣委員会で審議入りし、参院本会議にて成立しました。

参院成立後の翌日には改正案が施行されています。


改正案成立後、政府がマスクの高額転売を禁じる政令閣議決定します。

その流れを受けて、メルカリはマスクの出品を一律禁止すると発表しました。

罰則は1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金を課す厳しいものでした。


呼応するように、フェイスブックやインスタグラムもマスクの広告や販売を禁止します。

非常事態を利用して利益を上げようとする、いわゆる転売ヤーは一斉に排除されました。

非常にスピーディーな対応だったことを記憶しています。


閣議決定」は全閣僚の意思統一が原則です。

さらに、政府としての統一見解になります。反対をする閣僚がいたら閣議決定はできません


ニュース番組で閣僚が一堂に集まっている光景が映ることがあります。

それはおもに「閣議」の光景です。

そこで閣議決定された閣議書には花押(署名)が求められ、皇居・御座所に送られるのです。


閣議決定に反対する閣僚がいたら、首相は罷免をしたうえで閣議決定を行います。

戦後、閣僚の罷免は5例しかありません。


有名なものとしては、2010年5月28日、鳩山由紀夫首相が沖縄のアメリカ軍普天間基地移設問題に関する政府方針の署名を拒否する意向を示した社民党党首の福島瑞穂消費者・少子化担当相を罷免しています。


2005年8月8日、小泉純一郎首相が郵政民営化法案を巡る衆院解散に同意しなかった島村宜伸農相を罷免、自ら農相を兼任して衆議院を解散します。

これは会社の取締役会に例えるとわかりやすいと思います。


会社法上、取締役会は業務執行にかかわる意思決定機関として位置づけられます。

取締役会の議決には取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行いますが、最終的な決議は全会一致で決められることが多いと思います(日本では社長に反対意見を述べることは考えにくいので全会一致です)。

 

閣議決定のスピード感


最近のわかりやすい事例を紹介します。

政府は、新型コロナウイルス感染症新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象とする同法改正案を閣議決定し国会に提出しました。

2020年3月11日に衆院内閣委員会で審議入りし、13日の参院本会議で成立しました。


国会審議では緊急事態宣言の発令要件や、発令後に可能とされる自粛要請などの私権についてどのように扱うか議論されましたが、スピード感のある決定でした。


これにより、首相が緊急事態宣言を発令すれば、対象とされる地域の都道府県知事は、学校、保育所、床面積1000平方メートル超の映画館、百貨店、博物館などの使用、イベント開催の制限や停止の要請が可能になりました。

食料品、日用雑貨品の買い出し、必要な場合を除く外出の自粛要請もできます。


首相の権限が強まり、企業活動や個人の活動(私権)が大きく制限されます。

野党の立憲民主党などは改正案に国会の事前承認を必要とする規定を盛り込むよう要求しましたが、与党は応じませんでした。


閣議決定は内閣の意思を示す重要な意思決定です。

「内閣が○○について閣議決定をした」と報道があった場合、それは「法律を制定するための内閣が強い意思を表明する」と伝えていることです。


実際には内閣の意思を閣僚間でコンセンサスをとっただけですから、法律として制定するには国会の承認が必要になります。

内閣の意思決定のみでは法律として制定されません。

国会で否決されれば「法律は制定されない」ということです。


国会で議員から内閣に質問主意書が提出されると、内閣は原則的に7日以内に文書で答弁しなければなりません。

そして内閣は、その答弁を閣議決定しなければならない義務を負うことになります。


桜を見る会」に関する質問では「反社会勢力の定義は困難」との答弁書閣議決定します。

さらに、「『内閣総理大臣夫人』は、公人ではなく私人であると認識」という答弁書閣議決定します。


小泉進次郎環境相(当時)の「セクシー」発言に関する質問では「(セクシーという言葉には)正確な訳出は困難だが、ロングマン英和辞典(初版)によれば『(考え方が)魅力的な』といった意味がある」との答弁書閣議決定しています。


問題視された言動であっても、閣議決定されているわけですから、それが内閣の方針であるという強い印象を与えられます。

閣議決定は、国会審議を経ずに発せられる政令を決めたりできるので、非常時に迅速な対応ができる利点がありますが、逆に言えば国会のチェックが利かず、内閣の暴走を許すリスクもあります。

 

・今回の国葬の法的根拠は?


国葬とは国が行う葬儀であり財源が国であること。

歴代天皇の、明治天皇大正天皇昭和天皇のほか、軍人の東郷平八郎山本五十六国葬がおこなわれました。

例外は、吉田茂元首相で、このときには、佐藤栄作首相が閣議決定をおこなっています。


法的根拠になる国葬令は日本には存在しません。

日本国憲法が1947年に施行されたため失効しているのです。

岸田文雄首相の法的根拠は、内閣府設置法の第4条「国の儀式」として閣議決定すれば可能だという点です。


9月6日、「国葬」費用について、岸田首相は総額16億6000万円を要することを明らかにしました。

8月下旬に閣議決定した際の支出額である約2億5000万円から、大幅増額となりました。


その結果、主要メディアによる世論調査においては「国葬を支持しない」が「国葬を支持する」を上回る結果となっています。

あわせて岸田内閣の支持率も下落傾向にあります。


政府は最初から費用総額を包み隠さず国民に提示すべきだったのではないかと筆者は思います。

筆者は国葬に反対ではありませんが、強行という手段は禍根を残します。

曖昧に決まった国葬

多くの人が望まない形で強行されようとしています。


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国葬を強行「閣議決定」今さら聞けない基本の基本
法的根拠なく国会のチェック働かず暴走の恐れも
東洋経済 2022/09/12 尾藤 克之 : コラムニスト、明治大学客員研究員 
https://toyokeizai.net/articles/-/617672

 

 

 


国葬決定「国会関与求められる」衆院法制局などが見解 直前になって自民党内からも批判の声

東京新聞 2022年9月23日

https://www.tokyo-np.co.jp/article/204088


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安倍晋三元首相の国葬に関し、国会の関与がないのはおかしいとの批判がやまない。

岸田政権は国葬実施を内閣の一存で閣議決定したが、自民党内からも疑問の声が出ている。


法律の専門家である衆院法制局と衆院憲法審査会事務局は、憲法の趣旨を踏まえ「国会関与が求められている」との見解を示した。

国葬は27日に行われる。(坂田奈央、柚木まり)

 

憲法根拠に「国会が関わるべき」


「(国葬実施の)意思決定過程に国会(与党及び野党)が『関与』することが求められていると言えるのではないか」


衆院法制局と衆院憲法審査会事務局は先月、こうした見解を一つの論点としたメモを共同で作成し、野党の会合で示した。


根拠は憲法だ。

メモでは行政権は内閣にあるとしても、国会は①国権の最高機関、②全国民を代表する国会議員で組織?と定め、③内閣は行政権の行使で国会に責任を負うとしている、などと指摘。


国葬実施の判断が恣意的にならないためにも、国民の合意を得る手続きとして国会関与の必要があるとした。


岸田政権は7月22日の閣議決定で、葬儀を「国において」行うとした。

憲法が定めた三権分立を構成するのは、国会、内閣、裁判所の3つの独立した機関だ。


しかし、岸田文雄首相は8日の国会審議で「国民に強要することでない限り、法律は必要ないとの学説」に基づき、内閣の行政権の範囲で閣議決定のみで実施できると主張。


国葬実施は「時々の内閣でその都度判断される」とし、今後の国葬も内閣の判断だけでよいとの考えを繰り返した。


これに対して、岸田政権が政府や内閣の葬儀でなく「国」を持ち出す以上、主権者である国民の代表の国会が関わるべきといえるのでは?というのが衆院法制局などの考え方だ。


同様の意見は自民党内からも出ている。

石破茂元幹事長は「現行憲法下で主権者が国民となった以上、『国権の最高機関』で全国民を代表する議員で構成される国会の議決が必要だ」とブログに書き込んだ。

13日の党総務会でも石破氏は同じ意見を述べたほか、別のメンバーからも同じ趣旨の発言があった。

 

・イギリスは国王以外、国会の議決必須


一方、19日にエリザベス女王国葬を行った英国では、慣習法で国葬の対象となるのは原則国王としており、国王以外の国葬では国会の議決を必須としている。


女王以外で直近の国葬は1965年のチャーチル元首相。

当時のエリザベス女王の指示を受けたウィルソン首相が議会に提案し、議会が全会一致で可決した。首相はチャーチル氏の保守党と異なる労働党だった。

 

・民主的手続きが必要


英国の政治と社会に詳しい日本大の松本佐保教授(国際政治)の話 英国では理解を得ぬまま国葬を行えば国民が反発し、国の不安定化につながるとの考えが強いため、基本的に議会の決定を求めている。

日本では政府が国会に諮らず閣議決定したが、国民の税金から費用を支出する限り、少なくとも国会で野党との議論を経ないと、民主主義的な手続きを踏んだことにならない。


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国葬決定「国会関与求められる」衆院法制局などが見解 直前になって自民党内からも批判の声
東京新聞 2022年9月23日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/204088

 

 


吉田照美 国葬費用の閣議決定に疑問「国会なんていらないじゃん?国会に私をとお願いしているくせに」

スポニチ 2022年8月27日 

https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2022/08/27/kiji/20220827s00041000394000c.html


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フリーアナウンサー吉田照美(71)が27日、文化放送伊東四朗 吉田照美 親父・熱愛」(土曜後3・00)に出演し、安倍晋三元首相(享年67)の国葬決定のプロセスに疑問を呈した。


政府は26日、9月27日に実施する安倍元首相の国葬の費用として、22年度予算の一般予備費から2億4940万円を支出することを閣議で決定した。

しかし一部では、警備費はさらに35億円多くかかる可能性も報じられている。


吉田は「実際、安く見せようとしている発表のしかただよね。警備費が35億くらいかかるでしょう?ほんとだよ?プラスすると37億いくらで」と懸念した。


世界各国から約6000人の要人が参列すると見込まれているが、閣議決定の約2・5億円には警備費用は含まれていないとみられる。

吉田は「偉い方を各国から呼んだりしたら、滞在費の問題とか、いろんなことも出てくると、膨大なお金になるんじゃないの?」と疑問を口にした。


また吉田は、全額が国費で支払われるにも関わらず、国会での審議もなく、閣議で決定されたことにも疑問を投げかけた。


「ずっと安倍政権から、何でも閣議決定で決めちゃうってことをやってたら、国会なんていらないじゃん?みんな(選挙で)“国会に私を”と言いながら、国民にお願いしているくせに、国会は開かない」と不満を漏らした。


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吉田照美 国葬費用の閣議決定に疑問「国会なんていらないじゃん?国会に私をとお願いしているくせに」
[ 2022年8月27日 
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2022/08/27/kiji/20220827s00041000394000c.html

 

 

 


■安倍首相が乱発する閣議決定、無知の突破力がもたらす異常事態

週刊ポスト 2020.02.01

https://www.news-postseven.com/archives/20200201_1534054.html?DETAIL


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閣議決定」を経た答弁書は政府の統一見解となり、大臣の国会答弁より重い意味を持ち、政府機関の役人はその内容に縛られる。


元文部科学官僚の寺脇研京都造形芸術大学教授が指摘する。


安倍総理自衛隊を『わが軍』と呼んでしまった。答弁書でも追認した。だから役人が国民から『自衛隊は軍隊か』と聞かれたら、『国際法上、一般的には軍隊と取り扱われる』と答えることになる。閣議決定ですから。総理夫人が公人か、私人かの問題も、安倍総理自身が妻は私人だと考えているのだから、そう答弁書にまとめなくてはなりません。それが閣議決定されると、役人は国民から『昭恵さんは公人か私人か』と問われたら、『私人です』と答えねばならないが、それに対して『何で私人に指示されて動いているのか』という問題が出てくる。森友学園の件でも同様ですが、役人は閣議決定の内容につじつまを合わせるために、資料廃棄といった無理をしなければならなくなる」


2015年刊『検証 安倍イズム』(岩波新書)でいち早くこの閣議決定政治を指摘していた政治ジャーナリストの柿崎明二氏が、その原点に遡る。


「第一次安倍政権時代の2006年、村山談話を換骨奪胎するために『侵略については定義が確立されていない』との政府答弁書閣議決定したのが端緒でした。歴史認識や安全保障を中心として、第二次政権ではどんどん閣議決定を利用する範囲が広がっている。国会を通さずに官邸中心で作成できるし、その後の国会では野党の追及を『政府答弁書の通り』とかわすこともできる。安倍首相にとって非常に使い勝手がいいんです」


そうした政治手法の“集大成”ともいえるのが、今回の国会同意なき自衛隊海外派遣だろう。


1月20日から中東に派遣された海上自衛隊のP3C哨戒機が現地で活動を開始し、2月2日には護衛艦が出航する。


小泉政権時代の自衛隊イラク派遣が国会で特別措置法を制定した上で実施されたのに対し、安倍政権は昨年の官庁仕事納めの12月27日、国会の議論がないまま「閣議決定」だけで派遣を決定した。


憲法学者水島朝穂早稲田大学法学学術院教授は、「安倍晋三という『無知の突破力』をもつ首相が長期在職していることによって引き起こされた異常事態」と厳しく批判する。


自衛隊を中東に派遣する場合の法的根拠は、武力攻撃事態・存立危機事態法や海賊対処法、国際平和支援法など5つの法律がある。今回のケースはどれも適用するのが困難で、本来は新たな特別措置法を国会で定める必要があった。しかし、安倍政権は国会での議論を嫌う傾向が強く、国会の議決がいらない閣議決定だけで派遣した。議会制民主主義を完全に否定するやり方と言えます」


前回のイラク派遣をめぐっても、安倍政権による自衛隊の日報隠しが問題化した。

その後、大部分が黒塗りで公表された日報には、「非戦闘地域」とされた派遣地域で「戦闘」や「銃撃戦」などの記述が複数箇所あった。


それについても、安倍首相は〈「一般的、いわば国語辞典的な意味での戦闘」は、自衛隊法等において(中略)定義されている「戦闘行為」とは異なるものである〉〈政府としては、自衛隊が(中略)対応措置を実施してきた区域については、(中略)「戦闘行為」が行われることがないと認められる地域に該当していたと考えている〉と閣議決定している。


国民に情報を隠し、国会の論点をずらし、政権の方針に逆らう異論を許さない。

数々のトンデモ閣議決定は、この政権の独善的本質を物語っている。


週刊ポスト2020年2月7日号


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安倍首相が乱発する閣議決定、無知の突破力がもたらす異常事態
週刊ポスト 2020.02.01
https://www.news-postseven.com/archives/20200201_1534054.html?DETAIL

 

 

 


■石破氏、安倍内閣は「閣議決定で何でも決まる」

朝日新聞 2020年5月22日

https://www.asahi.com/articles/ASN5Q7G47N5QUTFK01Q.html

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自民党石破茂元幹事長(発言録)


(政府が1月に東京高検の黒川弘務検事長の定年延長を閣議決定したことをめぐり)安倍内閣の一つのキーワードが「閣議決定で何でも決まります」というところ。

閣議決定で変えていいものと、変えられないものがある。


検察庁法をよく読むと、施行は日本国憲法施行の日と同日にするとわざわざ条文に書いてある。

憲法体系の一翼をなすものが検察庁法。


そして1981年、国家公務員法は検察官には適用されないという明確な答弁がある。

国会で行政の責任者が答弁し、それを前提に法律ができているにもかかわらず、それをひっくり返すことが閣議決定でできるのかと思っている。


閣議決定オールマイティーではないので、なんでもできるという話ではない。

普通の条文の解釈を変えるのはできるかも知れないが、憲法秩序そのものに触れることは、閣議決定といえども変えることができないのではないかという思いがある。(22日 インターネット番組「Choose Life Project」で)


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石破氏、安倍内閣は「閣議決定で何でも決まる」
朝日新聞 2020年5月22日
https://www.asahi.com/articles/ASN5Q7G47N5QUTFK01Q.html

 

 

 

憲法解釈変更を閣議決定 集団的自衛権の行使容認

日本経済新聞 2014年7月1日

https://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0103O_R00C14A7MM8000/


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政府は1日夕の臨時閣議で、集団的自衛権を使えるようにするため、憲法解釈の変更を決定した。


行使を禁じてきた立場を転換し、関連法案成立後は日本が攻撃されていなくても国民に明白な危険があるときなどは、自衛隊が他国と一緒に反撃できるようになる。

専守防衛」の基本理念のもとで自衛隊の海外活動を制限してきた戦後の安全保障政策は転換点を迎えた。


安倍晋三首相は同日夜に記者会見し、今回の決定の理由を「あらゆる事態を想定して国民の命と平和な暮らしを守るために切れ目のない安全保障法制を整備する必要がある」と強調。

万全の備えが戦争の抑止力につながるとした。

集団的自衛権を行使する場合は「必要最小限度でなければならない」と述べ、限定容認の立場を主張した。


解釈変更の閣議決定にあたり、政府は集団的自衛権の行使を禁じた1972年の政府見解を引用した。

当時は憲法武力行使を認める必要最小限度の範囲を超えるとした。


今回は安全保障環境の変化などによって「他国への武力攻撃でも、わが国の存立を脅かすことも現実に起こり得る」と指摘。

必要最小限度に含まれると結論づけた。


政府は行使を抑制する歯止めとして、武力行使を認める新たな3要件を規定。

(1)密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、国民の生命・自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある
(2)国民を守るために他に適当な手段がない
(3)必要最小限度の実力行使――を挙げた。


3要件を満たした場合の武力行使は「憲法上はわが国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置」とし、国際法上は集団的自衛権が根拠と明記した。


集団的自衛権を使う必要がある事態について、政府はこれまでの自民、公明両党の協議で、邦人輸送中に武力攻撃を受けた米艦の防護や、米国に向かう弾道ミサイルの迎撃など8つの事例を示してきた。

いずれのケースも3要件を満たせば可能になると説明している。


集団的自衛権以外で、政府は戦闘下のシーレーン海上交通路)での機雷除去を想定し、国連決議に基づき多国籍軍などが侵略国を制裁する集団安全保障での武力行使も与党に提案したが、公明党が反対したため規定しなかった。

政府は集団的自衛権同様、必要最小限度の武力行使などの要件を満たせば、認められるとの立場だ。


国連平和維持活動(PKO)に参加する自衛隊が離れた場所にいる他国部隊や国連職員を助ける「駆けつけ警護」での武器使用を可能にする方針も示した。


沖縄県尖閣諸島沖で繰り返される中国の挑発行為などを念頭に、他国からの武力攻撃に至る前の侵害など「グレーゾーン」事態に迅速に対応するため、自衛隊の出動手続きの見直しも盛った。


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憲法解釈変更を閣議決定 集団的自衛権の行使容認
日本経済新聞 2014年7月1日 23:44
https://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0103O_R00C14A7MM8000/

 

 

 

 

 

■時代の正体〈258〉緊急事態条項は「独裁許す全権委任」

神奈川新聞 | 2016年2月14日

https://www.kanaloco.jp/news/social/entry-71433.html


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安倍晋三首相は夏の参院選憲法改正を争点にする考えを明言する。

中でも意欲的なのが自民党改憲草案に盛り込まれた「緊急事態条項」の新設だ。


戦争や大災害時、首相の権限強化と国民の権利制限を規定するものだが、憲法学者の長谷部恭男・早稲田大教授は「法律で十分対応でき、憲法改正は不必要」と断じる。

学者らでつくる「立憲デモクラシーの会」の集会で講演に立ち、ナチスの独裁を許した「授権法」(全権委任法)になぞらえ危機感をあらわにした。


緊急事態に対応するなら災害対策基本法有事法制など、現時点で必要と考え得る制度はもうできています。

さらに必要があるなら国会で法律を作ればいいだけだ。(法律を作らずに緊急事態条項を発動し)普段から準備をしていないことを泥縄式に行っていっても、事態への対応を実効的に動かしていくことはできません。


衆議院が解散されているときに大規模災害が起き、外敵が攻め込んできた場合、「解散から40日以内に総選挙ができず、緊急事態条項による対処が必要になる」と主張する人もいます。

そんな事が起こる可能性はほとんどありませんが、緊急時でも選挙をすればよい。

第2次世界大戦中の1942年にも総選挙が行われたことがありました。

選挙が解散から40日以内にできなくても、最高裁が選挙を無効と判断するとは思えません。


緊急事態への対応が必要なら国会を召集して、必要な法律を作ればいい。

衆院が解散されているのなら、憲法54条の2項には(衆院が解散され総選挙で新しい衆議院が成立するまでの間に、内閣の求めにより開かれる)参議院の緊急集会の制度がある。


どう考えても、緊急事態条項は必要ありません。

めったに起きないことを想定するのは、重箱の隅をつつくような議論です。

 

・手口


安倍政権は具体的根拠も必要性もないのに国民の不安をあおり、「対応する必要がある」と訴えてきました。

安全保障法制をめぐる議論と同じ手口です。


安全ではなく安心を保障しようとしている。

不安の種は尽きることはないので、安心を保障するための制度にはきりがありません。


政府の権限は無限に拡大することになる。

そうしたことをやってきた政府であり、これからもやっていくと思わないといけない。


私が不要だと主張しても(推進派は)諦めるような人たちではありません。

もし、緊急事態条項を憲法に盛り込むのならグローバルスタンダード(国際標準)を取り入れる必要があります。


それは裁判所によるコントロール(統制)です。

日本には「高度に政治的な問題に裁判所は口を出さない」という統治行為論という法理があります。


緊急事態条項が適用され、政府に権力が集中されれば、高度に政治的な問題に裁判所がものを言わないといけなくなる。

判断を回避しないよう「裁判所は統治行為論を使わない」ということを憲法に書いておく必要がある。


最高裁の人事に政府が口を出すことも防がねばなりません。

最高裁判事の任命には国会両院の3分の2の同意が必要だとすることも必要です。


権力が集中した政府が何をやり出すか、分からないからです。

必要がないものを無理矢理入れようとするのなら、幾重にも、それに備えるための仕掛けを導入する必要がある。

それをしないと日本の立憲主義が壊れてしまう。

 

・目標


ドイツにカール・シュミットという学者がいました。

彼は緊急事態に対応して国家機関に権限を集中することを「委任独裁」という言葉で説明しました。


委任独裁では、問題が解決されれば、元の立憲主義的な政治体制に戻っていくと考えます。

一方、憲法制定勢力という主権者が現れ、憲法を破壊し、既存の政治体制を飲み込んでしまうことを「主権独裁」と定義しました。


当初シュミットは委任独裁と主権独裁は異なると主張しましたが、そのうち区別をしなくなります。

両者の距離は限りなく近いことに、気付いたからだと理解できます。

委任独裁で始まった権限の集中が、主権独裁に至る危険性はとても強いものです。


自民党改憲草案には緊急事態の定めがあります。

政府の決定で憲法まで変えられるとは書いてありませんが、実際発動されれば、緊急事態に対応するために作られ、ナチスの独裁を許したドイツの授権法(全権委任法)と変わりのない運用がされる恐れがあります。


安倍政権の最終目標は自民党改憲草案の実現です。

「個人を尊重し、多種多様な生き方を認め、生き方はそれぞれの個人が選び取るものだ」という日本国憲法の根本を否定しようとしている。


改憲草案の前文には、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守ると記載されている。

政府が国民の中に気概を育ててあげるから、ついてきなさいと言い、単一の生き方へ国民を誘導しようとしています。


安倍首相は人権、法の支配、民主主義は普遍的な価値であると言っているが、本音と異なるリップサービス

だまされてはいけない。


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時代の正体〈258〉緊急事態条項は「独裁許す全権委任」
神奈川新聞 | 2016年2月14日
https://www.kanaloco.jp/news/social/entry-71433.html

 

 

 

 


■9条改憲より恐ろしい「緊急事態宣言」条項!

NetIB-News(福岡の経済メディア)2015年11月13日

https://www.data-max.co.jp/article/7499


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10月下旬に新聞に掲載された意見広告が警告した「緊急事態宣言を可能とする憲法改正の危険性」が来年夏の参院選挙後、現実のものになる危険が出てきた。


安倍首相が11月10、11日の衆参予算員会の国会閉会中審査で、憲法改正の極めて重要な課題として、「緊急事態条項」の必要性を強調したからだ。

自民党は、来年の参院選で与党が77議席以上当選し参院で3分の2以上を占めれば、憲法改正の発議を狙うことができる。


自民党憲法改正草案の緊急事態宣言条項には、「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる」とある。

緊急事態が宣言されると、「何人も、法律の定めるところにより」「国その他公の機関の指示に従わなければならない」という内容だ。

 

独裁国家をつくったナチスヒトラーの手口


冒頭に紹介した意見広告は、10月下旬に朝日新聞などに掲載されたもので、「ナチス憲法 あの手口に学んだらどうかね」という麻生太郎財務相の発言を取り上げながら、自民党憲法改正草案の「緊急事態宣言」条項の危険性を訴えていた。

意見広告を出したのは、一人一票の実現に取り組んでいる升永英俊弁護士、伊藤真弁護士らだ。


麻生財務相が「学んだらどうか」と言った手口と言えば、ナチスヒトラーが、1933年3月、行政府(内閣)に立法権などを与えた全権委任法によって、国民の知らないまま憲法を変えて、独裁国家をつくった歴史が思い浮かぶ。


当時もっとも民主的と言われたワイマール憲法が停止させられ、ナチスヒトラーが権力を握った。

だが、ナチスが圧倒的多数を占めたのは、全権委任法の結果だけではない。

 

ナチスに反対した7割が緊急事態宣言でほぼ全員賛成に!!


升永弁護士は、ナチスヒトラーが選挙で圧倒的多数の議席を握った事情を、こう説明する。


「1933年2月28日に、ドイツでは、『緊急事態宣言』が出た。1933年2月28日から数日中に、約5,000人が司法手続きなしで、逮捕・予防禁され、行方不明となった。32年11月6日の選挙では、66.9%の選挙人がナチス以外の政党に投票した。『緊急事態宣言』下、1年後の33年11月12日の総選挙(投票率95%)では、ナチス支持票が、92%であった。すなわち、32年11月6日の選挙ではナチスに反対する政党に投票した、全選挙人の66.9%のほぼ全員が、ナチスを支持した。すなわち、1932年のドイツ人(ただし、32年11月6日の選挙で、ナチスに反対する政党に投票した、全投票人の66.9%に人々)は、ほぼ全員、司法手続きなしの、逮捕・予防拘禁・その後の行方不明を知って、恐怖心と無力感と諦観から、ナチスを支持した」。


つまり、「1933年のドイツ人は、緊急事態宣言下の司法手続きなしの逮捕・予防拘禁・行方不明を知って、心は、折れた」(升永弁護士)のだ。

 

・緊急事態宣言で、国民主権が自然死する


緊急事態宣言が可能となると、言論の自由も、表現の自由も、報道の自由も、デモも封殺される。


9月に成立した安保法にしても、憲法調査会での憲法学者3氏の違憲発言や、SEALDsの国会前デモがなければ、もっと早く無風状態で成立したのは想像に難くない。


安保法案反対の行動ができたのも、表現の自由が日本にあるからだ。

しかし、緊急事態が宣言され、ナチス・ドイツのようになれば、弾圧される覚悟なしには、海外派兵反対もTPP反対も、プラカード1枚掲げられなくなるだろう。


民主主義が機能するには、単に投票権があれば足りるわけではない。

候補者選択を判断する十分な情報が言論の自由報道の自由によって提供され、容易にアクセスでき、意見表明や、デモなど政治的行動の自由がなければ、民主主義は機能せず、国民主権は、形式上存在しても、自然死する。


護憲派は、長く憲法改正の焦点として「9条を守れ」をスローガンにしてきたが、来年の参院選まで約9カ月の今、緊急事態宣言条項阻止に重点を移すときだ。【山本 弘之】


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9条改憲より恐ろしい「緊急事態宣言」条項!
NetIB-News 2015年11月13日
https://www.data-max.co.jp/article/7499

 

 

 


■ナチ党台頭に学ぶ憲法改正 熊倉逸男・論説委員が聞く

東京新聞 2018年2月17日

https://www.tokyo-np.co.jp/article/3145


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安倍晋三政権による日本国憲法改正の動きで、憲法九条をめぐる論議が活発化しているが、もう一方で問題なのが、緊急事態条項の追加。


ドイツ近現代史が専門の石田勇治東京大大学院教授(60)は、ワイマール憲法下で緊急事態条項が乱用されナチ党を台頭させたと警告、戦後のドイツ基本法憲法)は、その過ちを繰り返さない知恵に満ちていると指摘する。

 

・緊急事態の乱用懸念 東京大教授・石田勇治さん

 

熊倉 当時、最も民主的といわれたワイマール憲法下で、なぜナチ党(国民社会主義ドイツ労働者党)が政権を取れたのでしょうか。

 

石田 国政選挙でのナチ党の得票率はピーク時でも37%、ヒトラーが首相に就任した時は33%ですから、圧倒的多数だったわけではありません。三分の一しか票を取っていないのに政権につけたのは、時の大統領ヒンデンブルクヒトラーを支える決心をしたからです。
ワイマール共和国は議院内閣制をとっていましたが、憲法に緊急事態条項があり、大統領に非常大権(緊急措置権)を認めていました。米国発の世界恐慌の影響がドイツに及ぶ一九三〇年代初頭、政党間の対立は激化し、政府は国会に多数をもつことができなくなります。そこで乱用されたのが大統領緊急令です。これは法律同等として通用したので、国会無視の政治がまかり通ったのです。
ナチ党が台頭したのはそんな状況でした。ヒンデンブルクは帝政派の人物で、民主的な憲法が好きではなかった。反憲法ヒトラーを利用して、国のあり方をつくりかえようと三三年一月、首相に任命しました。彼をコントロールできると思っていたのです。

 

熊倉 ヒトラーはその機会をどう利用したのでしょうか。

 

石田 首相となったヒトラーは、共産主義の撲滅と共和派の一掃に乗り出します。大統領を動かして国会を解散し、大統領緊急令を出させて野党の自由な選挙活動を不可能にしました。
同年二月二十七日に国会議事堂炎上事件が起きると、これを共産主義者の陰謀と断定し、「国民と国家を防衛するための大統領緊急令」を公布させて共産党員らを拘束、憲法が定める国民の基本権を停止しました。
この緊急令は一時的なものとされましたが、実際は四五年に連合軍が解除するまで効力を発揮しました。これでドイツは基本権保障のない国になり、ホロコーストユダヤ人大虐殺)の条件が出来上がりました。

 

熊倉 そしてヒトラーは政権基盤を固めていくのですね。


石田 政府の露骨な選挙介入にもかかわらず、三三年三月の国政選挙でナチ党は単独過半数を達成できませんでした。ドイツ人は皆ヒトラーのとりこになったわけではないのです。
ヒトラーがどうしても手に入れたかったものは、国会の審議を経ずに自由に法律を制定できる授権法(全権委任法)でした。「国難除去」を図る強い政府の実現が狙いでした。
国会議員の三分の二の出席と出席者の三分の二の賛成投票が必要でしたが、前述の大統領緊急令で共産党の国会議員を拘束して母数を減らし、議会運営規則を議決直前に変更して反対派の欠席戦術を封じ、無理やり制定させました。
授権法が通ると、国会は立法機能を失い、ヒトラー政府は思いのまま政策を実行できるようになりました。これを、何も決められなかったワイマール時代と違って、決められる政治が実現したと歓迎した者は少なくなかったのです。

 

熊倉 ヒトラーは人気を維持するため、経済や失業対策にも力を入れていたようですね。

 

石田 はい。政権基盤拡大の鍵として失業対策を最重要課題と考えていました。公共事業を推し進め、若者の勤労奉仕制度を導入し、女性労働者を家庭へ戻し、夫婦共働きを禁じ、徴兵制を導入することで失業者を減らしました。
前の政権の政策を大規模化しただけなのに、自分ひとりの手柄にしました。有名なアウトバーン(高速道路網)もヒトラーの考案物ではありません。ただそのように宣伝され、ヒトラー崇拝の一要素になりました。

 


熊倉 戦後のドイツではナチ独裁を繰り返すまいとドイツ基本法を制定したのだと思いますが、日本国憲法改正論議では基本法がたびたび改正されていることが引き合いに出されます。
石田 西ドイツは分断国家としてスタートしたので、基本法は初めから暫定憲法だといわれていました。憲法ではなく基本法と称したのは分断された現状を固定化したくなかったのと、将来の統一に向けての改定・補充を前提としていたからです。
六十回改正しましたが、国の基本的な原理に触れるような変更はありません。実は基本法には「永久条項」といって、憲法改正を通しても変えられない条項があります。それは人間の尊厳の不可侵性や基本的人権、民主的かつ社会的連邦国家立憲主義など、ナチ独裁の反省の上に立つ根本原則です。その上で、自由で民主主義的な憲法秩序を脅かす者への抵抗権を定めています。そういうことに触れずに改正数の多さだけを強調するのはいかがなものでしょうか。
熊倉 一九六八年の基本法改正では緊急事態条項が盛り込まれました。どんな経緯、内容なのでしょうか。

 


石田 緊急事態法制の整備は、西独が主権を回復する過程で西側三カ国と取り決めたことでした。緊急事態に対処する権限を米英仏に握られているという状態を早く終わらせたいという政府の意向がありました。
西独では五〇年代に再軍備が進み、徴兵制も導入されました。東側陣営の武力介入に備えるために必要だとする声もあり、十年がかり、廃案と修正を繰り返す大論争の末、大連立政権下で盛り込まれました。

 

熊倉 自民党憲法改正草案でも緊急事態条項が盛り込まれています。独基本法の条項と何が違うのでしょうか。

 

石田 ドイツの場合、主眼はヒトラーのような独裁者を二度と生み出すことのないよう、いかに緊急時であっても執行権の野放図な拡大を許さない仕組みがあるということです。
緊急事態を事例ごとに詳しく区分し、国土への武力攻撃(防衛事態)の確認も、首相でも大統領でもなく、連邦議会が行います。切迫した場合の確認は、連邦議会連邦参議院の議員による常設の合同委員会(四十八人)で行います。この合同委には法律を制定する権限がありますが、連邦議会の議決によって廃止することができます。合同委と連邦議会の間に緊張関係を設けることで、合同委による専横を防ぐことが狙いです。
この仕組みは自民党の草案には見当たりません。外部からの武力攻撃であれ、自然災害であれ、緊急事態を確認するのは首相ひとりですし、内閣の発する政令は法律同等とされ、独裁的な国政運営が可能になります。

 


熊倉 緊急時の基本権制限についてはどうなっていますか。
石田 自民党草案では、「基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない」と努力目標が記されていますが、「侵害されてはならない」と書かれてはいません。ドイツの場合、緊急時に制限されうる権利はわずかながら明瞭に特定されており、為政者のさじ加減で停止・制限できる余地はありません。ドイツの場合、緊急時でも司法は機能しますが、日本はどうでしょうか。高度に政治的なことゆえに判断を避けるという統治行為論が障害になりそうです。

 


熊倉 緊急事態条項は日本にも必要なのでしょうか。

 


石田 戦争をしないのなら必要ありません。戦争には情報統制と国民の総動員態勢が不可欠でしょう。その実現には政府に権力を集中させる緊急事態条項が必要です。自民党のいう憲法九条の改定と緊急事態条項の再導入はセットであるとみるべきでしょう。いま再導入といったのは戦前の大日本帝国憲法にはあったからです。
緊急事態条項は安心・安全のためといいますが、為政者にとって都合のいいもので、乱用される危険性は否定できません。発動されれば真っ先にマスメディアが狙われるでしょう。そんな事態にならないよう、緊急事態条項の恐ろしさについて、メディア関係の方は広く伝えてほしいと思います。


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ナチ党台頭に学ぶ憲法改正 熊倉逸男・論説委員が聞く
東京新聞 2018年2月17日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/3145

 

 

 

 


■『報ステ古舘伊知郎が最後の反撃! ドイツ取材で緊急事態条項の危険性、安倍首相とヒトラーの類似点を示唆

excite.ニュース 2016年03月19日

https://www.excite.co.jp/news/article/Litera_2082/


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昨夜3月18日に放送された『報道ステーション』(テレビ朝日)が、いま大きな話題を集めている。


というのも、昨夜の特集は安倍首相が改憲の入口として新設を目論んでいる「緊急事態条項」。

しかも、ヒトラーが独裁のために悪用した「国家緊急権」と重ね合わせるという、安倍首相が激怒すること間違いなしの内容で、古舘伊知郎キャスター自らがドイツへ渡りレポートする力の入れようだったからだ。


まず、古舘キャスターはドイツからのレポートの最初に、こう話した。


ヒトラーというのは、軍やクーデターで独裁を確立したわけじゃありません。合法的に(独裁を)実現しているんです。じつは、世界一民主的なワイマール憲法のひとつの条文が、独裁につながってしまった。そしてヒトラーは、ついには、ワイマール憲法自体を停止させました」


ヒトラー独裁への経緯というのを振り返っていくと、まあ、日本がそんなふうになるとは到底思わない。ただ、いま日本は憲法改正の動きがある。立ち止まって考えなきゃいけないポイントがあるんです」


独裁の道に走らせたワイマール憲法の条文、それこそが「国家緊急権」だ。


「大統領は公共の安全と秩序回復のため必要な措置を取ることができる」という条文をヒトラーは悪用、集会やデモの開催を禁止し、出版物を取り締まり、共産主義者を逮捕し、野党の自由を奪い、あらゆる基本的人権を停止させた。


ここまでは教科書にも書いてあることだが、本題はここから。

この「国家緊急権」が「緊急事態条項」とそっくりではないか、と言及するのだ。


国家緊急権と緊急事態条項がそっくりだというのは、本サイトでも昨年から繰り返し指摘してきた。

安倍政権は大規模な自然災害時に迅速に対応するために緊急事態条項が必要なのだと強調するが、これは建前に過ぎない。

事実、自民党による憲法改正草案の該当箇所には、こうある。


《(緊急事態の宣言)第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。》


「災害時のために」と言うわりに、自然災害が出てくるのは最後の3番目である。

しかも草案では、緊急事態宣言は国会の承認が必要だが事後でもいいことになっており、これは事実上、事後承認でやりたい放題できる、ということだ。


くわえて草案には、ダメ押しで、《この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限尊重されなければならない。》とある。


つまり、法の下の平等、身体の拘束と苦役からの自由、思想と良心の自由、表現の自由といった人類普遍の権利でさえ「最大限尊重」(厳守ではない)程度の扱いになるのである。


夏の参院選で与党が3分の2以上の議席を獲得し、緊急事態条項の新設となれば、いよいよ本当に安倍首相はヒトラーのように独裁にひた走るのではないか──。

実際、昨夜の『報ステ』では、ワイマール憲法の権威であるドイツ・イエナ大学のミハエル・ドライアー教授にこの緊急事態条項を見せたところ、ドライアー教授はこう述べていた。


「この内容はワイマール憲法48条(国家緊急権)を思い起こさせます。内閣の一人の人間に利用される危険性があり、とても問題です。一見、読むと無害に見えますし、他国と同じような緊急事態の規則にも見えますが、特に(議会や憲法裁判所などの)チェックが不十分に思えます。(中略)なぜ一人の人間、首相に権限を集中しなければならないのか。首相が(立法や首長への指示など)直接介入することができ、さらに首相自身が一定の財政支出まで出来る。民主主義の基本は「法の支配」で「人の支配」ではありません。人の支配は性善説が前提となっているが、良い人ばかりではない」


良い人ばかりが首相になるわけではない。

現状の安倍政権の強権的な態度を考えると、じつに含みのある話である。


さらに番組ではスタジオゲストとして、昨年の安保法制の国会審議の際、与党の推薦で参考人として国会に招致され「安保法制は違憲」という見解を示した長谷部恭男・早稲田大学法学学術院教授が登場。


長谷部教授は、「内閣総理大臣がそう(緊急事態だと)思えば(緊急事態宣言を行える)という、主観的な要件になっている。(発動要件が客観的ではなく)非常に甘い」「場合によっては怪しいと思われれば令状なしで逮捕される、そんなことになるということも理屈としてはあり得る」と緊急事態条項の危険性を述べ、また、"緊急事態条項が必要ならば憲法に入れるのではなく法律を設けたらいい話なのではないか"という見解も示した。


このように、多角的に緊急事態条項を掘り下げた『報ステ』。

しかし、古舘キャスターは番組中、「ヒトラーのような人間が日本に出てくるとは到底想定できないんですが」と何度も念を押し、さらには一度たりとも「安倍」という二文字を発しなかった。


だが、この特集のテーマは緊急事態条項と国家緊急権の類似性のみに留まらず、緊急事態条項の新設を目論む安倍首相の危険性をも暗に伝えるものだった。


たとえば、ドイツからのリポートVTRでは、ヒトラーが経済政策と民族の団結を全面に打ち出したこと、ヒトラーが「強いドイツを取り戻す」という言葉で民衆から支持を得ていったこと、そしてヒトラーは巧妙に言葉を言い換え、独裁を「決断できる政治」に、戦争の準備を「平和と安全の確保」と表現していたことを、古舘キャスター自らが紹介した。

お察しの通り、これはすべて安倍首相に置き換えられるものだ。


というよりも、ヒトラーの手法を安倍首相が多分に意識し、真似ているといったほうがいいだろう。

現に自民党は、自民党東京都支部連合の事務局広報部長(当時)がヒトラーの選挙戦略を学ぼうという『HITLER ヒトラー選挙戦略』(小粥義雄/永田書房)なるナチス礼賛本を出版。


高市早苗総務相が「著者の指摘通り勝利への道は『強い意志』だ。

国家と故郷への愛と夢を胸に、青年よ、挑戦しようよ!」という推薦文を寄せていた(ちなみに同書は批判が殺到し、わずか2カ月で絶版回収されている)。


まさに、日本がいま置かれた危機的状況のなかで警鐘を鳴らす、渾身の特集。

既報の通り、政権からの圧力によって降板に追い込まれた古舘キャスターだが、この放送はそんな古舘氏と番組スタッフたちによる、じつに真っ当な方法による"政権への反撃"だったのだろう。


古舘キャスターは特集の最後を、こんな言葉で締めくくった。


「とにかく立ち止まってじっくり議論をする、考えてみるということが、この条項に関しては必要ではないか、その思いで特集を組みました」


こうした重要な情報を視聴者に伝えるのが、本来の報道の役割であるはず。

だが、ヒトラーよろしく日本の独裁政権はこれを"偏向報道"と呼び、不都合な事実を伝えるキャスターたちをことごとく握り潰すことに成功した。


まさしくいま恐ろしい国になりつつあるが、最後に気概を見せた『報ステ』は、古舘キャスター最終日の31日の放送まで見逃せないものとなりそうだ。大いに期待したい。(水井多賀子)


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報ステ古舘伊知郎が最後の反撃! ドイツ取材で緊急事態条項の危険性、安倍首相とヒトラーの類似点を示唆
excite.ニュース 2016年03月19日
https://www.excite.co.jp/news/article/Litera_2082/

 

 

 

 

 

 


■コロナ対応でも頻発、「閣議決定」ってそもそも何だ

こんな時でも安倍内閣の「閣議決定」に厳しい目が必要な理由

jbpress 2020.3.12

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59676

 

 

 

■安倍首相が日本を「戦争ができる国」に変えた…歴史に残る強引な大転換

週刊現代 2020.09.03

https://gendai.media/articles/-/75348

 

 


■日本の三権分立を問う

明星大学 2016.4  服部裕

https://www.jc.meisei-u.ac.jp/action/course/099.html

 

 

 

■緊急事態条項の実態は「内閣独裁権条項」である

自民党草案の問題点を考える

論座朝日新聞) 2022年07月02日 木村草太 首都大学東京教授(憲法学)

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2022070200003.html

 

 

 

■コロナ禍で改憲目論む 自民案「緊急事態条項」の正体とは

日刊ゲンダイ:2021/05/07

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/288809

 

 

 

■【ホントコ#13】吉田照美・垣花浩志 日本の民主主義が崩壊しようとしている!本当の三権分立とは何か?わかりやすく解説。

閣議決定が独裁への道へ!?

YouTube2022/11/30

https://www.youtube.com/watch?v=MRwbDAQlOkA

 

 


憲法への新設が議論 「緊急事態条項」の危険性

サンテレビ兵庫県)2022/06/23

https://www.youtube.com/watch?v=kJklUP1Hhe4

 

 


■なぜ、いま「緊急事態条項」が注目されているのか? #みんなのWHY

TBS NEWS 2020/05/03

https://www.youtube.com/watch?v=6SUjXGJtFeU