■「兄弟で大騒ぎ」どうしても朝日と毎日にケチをつけたい安倍前首相と岸防衛相
PRESIDENT 2021/05/27
https://president.jp/articles/-/46432
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・防衛省が「ワクチンを無駄にしかねない悪質な行為」と抗議
防衛省が5月18日、自衛隊による東京都と大阪府での新型コロナワクチンの大規模接種を巡って毎日新聞社と朝日新聞出版社がそれぞれ虚偽の予約をしたとして両社に抗議文を送った。
これに先立ち、岸信夫防衛相は午前中の記者会見で「不正な手段によって予約することは、貴重なワクチンを無駄にしかねない悪質な行為だ」と強く訴えていた。
17日から始まった大規模接種会場の予約では、サイトに接種券番号や生年月日を入力する必要がある。
しかし、防衛省は接種券を配る自治体の市区町村と番号を突き合わせておらず、架空の番号や生年月日でも予約ができてしまう。
毎日新聞と朝日新聞出版の記者は、この不備を確認するために実際に予約を行い、そのうえで「公益性が高い」と判断して毎日新聞やニュースサイトのAERA dot.に検証内容を掲載した。これに岸防衛相が噛みついたのだ。
・「無理に急ぐと混乱する」との声に耳を貸さず
国家権力とマスメディア、報道される側と報道する側、この両者の対立はよくあることだ。
だが、今回の岸防衛相の「悪質な行為」との批判には驚かされる。
そもそも政府が突貫工事のように大規模ワクチン接種を急いだ結果、こうした不備を招いたのである。
本来なら早急に改善すべき問題だ。
それを棚に上げて毎日新聞や朝日新聞出版を攻撃するのはお門違いで筋が通らない。
なぜ、政府はこれほどまでにワクチン接種を急ぐのか。
これから菅義偉政権にとって東京五輪、自民党総裁選、衆院総選挙という大きなイベントが控えているからだ。
菅首相は周囲の「無理に急ぐと混乱する」との声に耳を貸すことなく、ワクチン接種に突っ走っている。
ワクチンによって東京五輪などを政治的に成功させ、首相の座を維持したいのだろう。
・安倍晋三前首相「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯」
実際にシステム上にエラーやミスが生じるかどうかを確認して記事で問題点を指摘することは、メディアの役目である。
記事には裏付け取材が必要だ。
一般の人の予約の妨害には当たらないはずだ。
それを「悪質な行為」と一方的に批判するのは異常だ。
岸防衛相だけではない。
18日には安倍晋三前首相が「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯と言える」とツイッターに投稿している。
首相経験者とはとても思えない軽薄な発言だ。
岸防衛相は安倍前首相の実弟である。
母親の実家である岸家の養子となったために姓は違うが2人は血がつながっている。
人相もよく似ている。
2人ともアメリカとの安全保障を強硬に推し進め、安保闘争の標的となったあの岸信介元首相の孫である。
安倍、岸兄弟は、毎日新聞や朝日新聞など、いわゆる「リベラル」と呼ばれる媒体をたびたび批判している。
自身の政治信条と相容れないのだろう。
それは理解するが、だからといって気に入らないメディアの発信を封じ込もうとする態度は稚拙だ。
権力者がそんな態度を続ければ、民主主義はあっという間に滅んでしまう。
為政者は、多様な意見に耳を傾ける度量の広さを見せてほしい。
・「十分な準備期間がないままの見切り発車となった」と毎日社説
5月18日付の毎日新聞の社説は「大規模接種の予約開始 見切り発車の不備が露呈」との見出しを掲げ、冒頭部分でこう指摘する。
「自治体での接種が進まない中、菅義偉首相が先月末に防衛省に設置を指示した。十分な準備期間がないままの見切り発車となった」
「その結果、初日からシステムの不備が露呈した。自治体が送付した接種券に記載されていない架空の番号を入力しても予約ができてしまうという問題だ」
毎日社説が指摘するように、今回の不備の原因は菅首相の見切り発車にある。
菅政権がワクチン接種を急いだ結果、不備が生じたのである。
政府は責任を持って不備を解消しなければならない。
毎日社説は指摘する。
「接種の際には、接種券や本人確認書類と照合するため、架空の申込者は接種を受けられないと防衛省は説明している」
「しかし、架空の予約が殺到すれば、対象の高齢者にしわ寄せが及びかねない。大量の予約がキャンセルされ、円滑に接種が進まなくなる恐れもある」
「架空の申込者は接種を受けられない」。
これは防衛省の言い訳に過ぎない。
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■「兄弟で大騒ぎ」どうしても朝日と毎日にケチをつけたい安倍前首相と岸防衛相
PRESIDENT 2021/05/27
https://president.jp/articles/-/46432
■報ステ降板は安倍政権の圧力?
「政権与党」化した記者たちへ 政治ジャーナリスト後藤謙次さんの怒り
毎日新聞 2021/7/10
https://mainichi.jp/articles/20210710/k00/00m/010/002000c
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深く静かに怒っていた。
政治ジャーナリスト、後藤謙次さん(71)。
自民党を長く取材し、ニュース番組の解説ではその温厚な語り口がなじみ深いが、昨今の政治に、何より記者の劣化に憤りを募らせていた。
「いつから政治記者は『政権与党』の一員に成り果てたのか」と。【吉井理記/デジタル報道センター】
・「報ステ」レギュラー降板は「政権の圧力」?
雨がやんだ。
梅雨空にわずかな薄日が差している。
後藤さんと向き合ったのは国内外のメディアやジャーナリストでつくる「日本記者クラブ」(東京・日比谷)の、その薄日が差し込む談話室である。
東京オリンピックにひた走る菅義偉政権と、これを報じるメディアをどう見るか。
共同通信の政治部記者や「報道ステーション」(テレビ朝日)のコメンテーターなどとして、永田町取材歴40年を重ねる先達に問いたかった。
冒頭で記したように、昨今の政治記者の振る舞いに少なからぬ憤りを抱いておられるご様子だが、それは後述するとして、まずは国民の最大の関心事、東京五輪から。
「私は東京五輪は返上すべきだという立場です。コロナ禍の最初から言ってきた。これが戦争なら戦場を避けて五輪を開くことは可能かもしれない。でもウイルスは違う。人の流れがある限り、誰もが危険にさらされる。開催という選択肢は最初からない」
意外である。
五輪中継はテレビ局のドル箱なのだ。
そのテレビに今も出演する後藤さんの反対論だ。
思えば昨春、4年にわたる「報道ステーション」のレギュラーを外れ、不定期出演になった時も、安倍晋三政権を批判してきたことから「政権の圧力では」とささやかれた。
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■「政権与党」化した記者たちへ 政治ジャーナリスト後藤謙次さんの怒り
毎日新聞 2021/7/10
https://mainichi.jp/articles/20210710/k00/00m/010/002000c