■商社マンが明かす世界食料争奪戦の現場 日本がこのままでは「第二の敗戦」も
NEWSポストセブン 2022.01.01
https://www.news-postseven.com/archives/20220101_1717680.html?DETAIL
~~~
日本は70年以上も戦争と関わらずにきたはずだった。
しかしその日本がいま、世界で激しい「食料戦争」の渦中にある。
俳人で著作家の日野百草氏が、「国の通貨が安いまま戦うのは厳しい」と焦る商社マンに、牛肉を中心とした日本の「買い負け」事情を聞いた。
・「どこより高い金を出せば買えますよ、ただ買い負けているだけです」
食品専門商社のA氏(40代)に話を伺う。
以前、彼がこの国の食料問題に対する危機感を訴えた『憂国の商社マンが明かす「日本、買い負け」の現実 肉も魚も油も豆も中国に流れる』は思わぬ反響を呼んだ。
筆者もそこまでとは思っていなかったのだが、現実に食肉や魚介類に次々と値上げ、不足のニュースが続いている。
ただ一人の話だが、その一人の肌感は現に日本の危機を象徴している。多くの他国と「戦う」企業戦士も同様だろう。
「それと船ですね。こちらは取り負け、日本に寄ってもらえない」
その食料を運ぶコンテナ船もコンテナそのものも不足している。
食料争奪戦が「戦争」だとしたら、いまはまさに「戦時下」だ。
「値上げはさらに続くでしょう。いつ相場(食肉、穀物)が落ち着くかわからない」
個別の値上げを見れば、魚介類でいえばウニ、イクラ、タラバガニ、ズワイガニ、数の子など、いずれも最高値かそれに近い値上がりを記録している。
大手鮮魚専門店のスタッフいわく「あるだけマシ」とのことで、値段は高くても手に入れば御の字だという。
「魚介は高くてよければ国内産でリカバリーできます。でも肉や穀物は厳しい」
日本の食料自給率(カロリーベース)は本当に低い。
コロナ前の2018年の農水省データでアメリカ132%、フランス125%、ドイツ86%、イギリス65%、イタリア60%に対して日本は37%。
1980年代までは50%以上を維持してきたのに30年間ずっと低水準、30年間変わらない日本の平均賃金と同じ様相だ。
「フランスは自給率を上げるために努力してきましたからね。食料を掴まれるのは命を握られるのと同じって連中はわかっているのでしょう。私も同じ考えです」
(中略)
・日本の買い負けは悪しき円安のせい
この原油高と需要増大の中、海運会社、とくに利幅の小さい海上コンテナ輸送は効率よく稼ぐしかない。
日本はすでにこのコンテナ船事業という海運そのものには敗北(ロジスティクスによる敗北は日本の伝統芸)したため、現在の日の丸コンテナ輸送はONEジャパン1社と中小のわずかな船会社しか生き残っていない。
天然資源はもちろん日本は何もかも他国頼み、大量消費と飽食を謳歌してきた数十年ばかりの繁栄は砂上の楼閣だったということか。
それにしても改めて現場の声として聞きたい。
この買い負けの原因はなにか。
大まかで構わないので教えて欲しい。
「まず日本人が商売相手としては面倒くさいってことですね。欲しがるくせに金をケチる。どれだけ値下げできるか、この価格内でなるべく多く売ってくれって要求が度を越してます。これは輸入業者に限らず日本のどんな産業だって、企業人として働いていれば感じることだと思いますよ。おまけにちょっとでも売り主、製造側に瑕疵があれば報告書を出せ、改善計画書を出せって居丈高に要求する。日本人でもうんざりします」
この報告書、改善計画書というのは本当に曲者で、大事なことかもしれないが度を越すと難癖、クレーマーになる。
それも社内でやる分には勝手にすればいいが、取り引き先相手に要求するとなると他国では煙たがられることが多い。
「それも含めた過度の品質要求ですね。この場合は輸入材の瑕疵や輸送の遅れとかですね。日本人は完璧にしろ、時間は守れと言いますが多くの国はそうではありません。日本人の感覚や都合を押しつけてもこれまた相手はうんざりします」
品質管理とクオリティの高さは衛生用品や自動車などを中心に消費者の信用を得ているが、時として過剰品質になりかねない。
食肉についていえば日本は「この部位だけ切り分けろ」「形を均等にしろ」「色をよくしろ」と要求し、食べるに支障のない、おそらくエンドユーザーも大半は気にしないであろう部分まで要求する。
中国は「なんでもいいからちょうだい」とうるさいことを言わない上に日本より金を出す。
まして牛肉は内蔵どころか、近ごろは廃棄することが増えている皮などの部位まで持っていってくれる。
売る側がどちらを選ぶかは自明の理である。
「物流だってそうです。安くてうるさい日本の荷主なんか相手にしたくない」
相手がしぶしぶでも動いていたのは日本の金払いがよかったからであって、買い負ける、取り負けるということは金払いが悪くてうるさいから。
他にもっと金を払うクライアントがいるからそちらへなびく。
いたってシンプルな構図である。
「それにコンテナ不足で船は取れても運べない。コロナはもちろん自然災害でダメージを受けるのが物流です。マクドナルドもそれですね」
日本マクドナルドは2021年12月、カナダの水害により港が混乱、コンテナも足りず加工ジャガイモが運べなくなったとして「マックフライポテト」のMサイズとLサイズをしばらく休止した。
ごく短期間だが世間の衝撃は大きかった。当たり前に食べられたものが食べられない(実際はSサイズで食べられるのだが)、その実体以上のインパクトがあったのかもしれない。
MサイズとLサイズ販売の最終日には行列ができた。
漠然とした不安感がわけのわからない行動に走らせる。
それほどまでに食の影響とは恐ろしいものなのだ。
人間の動物としての本能を喚起する。
「さすがにマックは今後対策するでしょうけど、2022年からはこうしたことがあらゆる食の現場に起きるでしょうね」
実際、ジワジワと食品の価格は上がり、値段据え置きでも中身の減る「ステルス値上げ」も増えている。
とくに菓子類、ポテトチップスなどは顕著でちゃんと内容量の表示を見なければ「こんなに少なかったかな」と驚かされる。
「でもね、それもこれも日本の買い負けは円安のせいだと思ってます。強い円の力で引っ叩いて買い勝って言うこと聞かせてたのに、いまの日本で通貨が安いって怖いことですよ。通貨の安さにも良し悪しありますから」
日銀の黒田東彦総裁は2021年12月23日、経団連の会合で「円安はメリットが大きい」と語った。
どうだろうか、かつては円安のメリットがあったかもしれないが、輸出企業だって結局のところ燃料や原材料、部品の多くは海外から調達しなければ製品を作り輸出できない。
そもそも非製造業の大半にとって円安はデメリットのほうが大きい。
日本はかつての輸出一辺倒の国ではない。
しかし日銀はいまだに円安容認。じつは本稿、この件でA氏が怒って連絡してきたことに端を発している。
「いまの円安は悪い円安だと思います。もちろん強い国が自国通貨を操作、調整することはあります。人民元なんてまさにそれです。日本だってかつてはそうでした。でも現在の円安は日本の国力そのままの評価だと思っています」
現場で、現地で買いつけている彼にすれば後ろ盾となる通貨が安いことは不利。
多くの日本の一般国民も物価高、まだ一部とはいえ報道される品薄に不安を感じていることだろう。
「買い負けは戦場で負けたのと同じです。でも国の通貨が安いままで戦え、買い勝て、なんて無理ですよ」
市場は戦場、食料争奪は戦争のたとえは大げさではない。
こうした商社マンをはじめとする多くの現場で奮闘する日の丸企業戦士が戦場で負け、その繰り返しの先に待ち受けるのは日本の「第二の敗戦」だ。
買い負けを繰り返す中、再びコロナが世界で猛威をふるい始めた2022年、それは将来的な日本の食料危機の端緒となりかねない。
【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。全国俳誌協会賞、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社・共著)『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛された魂の俳人』(コールサック社)他。
~~~
商社マンが明かす世界食料争奪戦の現場 日本がこのままでは「第二の敗戦」も
NEWSポストセブン 2022.01.01
https://www.news-postseven.com/archives/20220101_1717680.html?DETAIL
■日本人は低い食料自給率のヤバさをわかってない~6割以上を海外に頼る状況を放置していいのか~
東京経済 2021/10/30 岩崎博充:経済ジャーナリスト
https://toyokeizai.net/articles/-/464342
~~~
10月31日に投開票を控える衆院選を前に、選挙戦では、どの政党からも「経済安全保障」というフレーズが飛び交っている。
岸田政権は、経済安全保障政策として今年5月に閣議決定された「中間取りまとめ」であげられたエネルギー、情報通信、交通・海上物流、金融、医療の5分野を重点分野として取り上げている。
しかし、実は日本には古くから高いリスクとして懸念されている安全保障分野がある。
それは「食料自給率」の低さだ。
食料自給率とは、自国の食料供給に対する国内生産の割合を示す指標。
日本は先進国でかなり低いレベルにある。
食料の自給は、国民の命を直接左右するものであり、ある意味では防衛やエネルギー資源以上に意識しなければならない。
ただ、今回の総選挙では大きなテーマにもなっていない。
日本の食料自給率は、本当に大丈夫なのか……。
農林水産省の資料などをもとに、いま一度考え直してみたい。
・日本の食料自給率、過去最低の37%!
農林水産省が最近になって発表した、2020年度のカロリーベースの日本の食料自給率は、前年度から0.38ポイント減少して37.17%になった。
統計データが存在している1965年度以降、小数点レベルで見れば過去最低の数字だ。
新型コロナウイルスによる影響で、畜産品の家庭用需要が拡大し、牛肉や豚肉などの国内生産量が増えたにもかかわらず、昨年度は輸入が増えた影響だとされている。
農水省は、現在2030年度までにはカロリーベースの食料自給率を45%に高める目標を掲げている。
ところが、日本の食料自給率は年々ズルズルと減少しているのが現実だ。
食料自給率の考え方には、熱量で換算する「カロリーベース」と金額で換算する「生産額ベース」の2種類がある。
カロリーベースでは1965年には73%あったが、前述したように今や37%まで下がっている。
生産額ベースの自給率も1965年には86%あったが、2020年には67.42%にまで減少している。
日本人の食料の6割以上を海外からの輸入に頼っているというのが現実だ。
いわゆる「食料安全保障」と呼ばれる分野である。
長い間、そのリスクが指摘されているものの、効果的な政策は出てきていない。
最近になって、新型コロナウイルスによる混乱などに伴って、牛肉や小麦、チーズなどが値上げされた。さらには天候不順などが原因で、10月1日以降輸入小麦の政府売渡価格が前期比19%引上げられ、家庭用レギュラーコーヒーが20%程度、そ
してマーガリンも12%程度値上げしている。
食料品の価格上昇は、日本に限ったことではないものの、世界的に需要と供給のバランスが崩れてきていることは間違いないだろう。
主食の穀物などの値上がりは、原油価格の値上がりと同様のインパクトを持っている。
日本では大きくクローズアップされることがないが、食品の7割近くを輸入に頼る危機感を、日本人はもっと意識しなければならない。
実際に、日本の食料自給率の実態を見てみよう。
たとえば品目別のカロリーベースの食料自給率は次のようになる(2020年度、農林水産省「カロリーベースと生産額ベースの食料自給率」より)。
●コメ…… 98%(生産額ベースでは100%)
●野菜…… 76%(生産額ベースでは90%)
●魚介類…… 51%(生産額ベースでは49%)
●果実…… 31%(生産額ベースでは65%)
●大豆…… 21%(生産額ベースでは47%)
●小麦…… 15%(生産額ベースでは19%)
●畜産物…… 16%(生産額ベースでは58%)
●油脂類…… 3%(生産額ベース47%)
日本で100%自給できている食料といえばコメぐらいしかない。
食料自給率を国際比較で見ても、日本の低さが際立つ(農林水産省、2018年、日本のみ2020年度、カロリーベース)。
●カナダ…… 266%(生産額ベースでは123%)
●オーストラリア…… 200% (生産額ベースでは128%)
●アメリカ…… 132% (生産額ベースでは93%)
●フランス…… 125% (生産額ベースでは83%)
●ドイツ…… 86% (生産額ベースでは62%)
●イギリス…… 65% (生産額ベースでは64%)
●イタリア…… 60% (生産額ベースでは87%)
●スイス…… 51% (生産額ベースでは50%)
●日本…… 37% (生産額ベースでは67%)
ちなみに、農水省食料安全保障室の「食料需給表(令和2年度)」によると、日本の穀物自給率は28%(2018年度)、2018年のデータでは172の国・地域中128番目、OECD加盟38カ国中、32番目となっている。
・日本の食料自給率が低いのは農地面積が少ないから?
日本の食料自給率は、なぜこんなにも低いのだろうか。
人口の少子高齢化によって、農業人口が大きく減少していることなどがその原因といわれるが、もっと根源的な部分にも理由があるのかもしれない。
たとえば、ちょっと古いデータだが、日本と先進国の農地面積を比較してみよう(2017年、農林水産省「知ってる?日本の食料事情 2020年12月」より)。
●アメリカ……4億555万ヘクタール
●オーストラリア……3億9380万ヘクタール
●カナダ……5769万ヘクタール
●フランス……2870万ヘクタール
●ドイツ…… 1810万ヘクタール
●イギリス……1780万ヘクタール
●イタリア……1283万ヘクタール
●日本……444万ヘクタール
日本の農地面積は、ほかの国に比べて桁違いに少ない。
1人当たりの農地面積で見ても、日本はわずか3.5ヘクタール(資料出所:同、以下同)しかない。
オーストラリアの約400分の1、アメリカの約40分の1、イギリスの約8分の1の農地面積しかない。
これでは、国民の食料を賄っていけないと考えるのが自然だ。
「農家一戸当たり」の農地面積を見ても、EUは日本の7倍(農林水産省、2009年、以下同)、アメリカは104倍、オーストラリアは1591倍というデータもある。
なぜこうなってしまったのか……。
日本の場合、国土面積のうち約7割が森林を占めており、農地面積が限られている、という説明ができる。
確かに、森林を農地に転換するのは大変な労力だが、これまでの農業政策でよかったのかという疑問は残る。
森林を守ることも大切だが、場所に応じて適切な使われ方をしていくことも大切だ。
日本はこれまで広大な森林面積を使って、ゴルフ場をつくり、住宅地を開拓してきた。
それに対して、農業は農業組合などの既得権益を持つ団体の保護に追われて、抜本的な改革ができなかったとも考えられる。
また、農林水産省自身が、戦後の木材不足を見越してスギやヒノキの植林を推奨したために、森林がそのまま放置された面もある。
日本の森林面積率は国土の約66%(2017年現在、以下同)。
それに対してオーストラリアは16%、イギリスは13%だ。アメリカ、ドイツはそろって32%。
食料自給率の向上を考えたときに、この66%の森林面積をどう生かしていくかが大きな問題といえるかもしれない。
また、日本の場合は、近年の人口減少で専業農家が減少してきたことも大きな影響を及ぼしている。
こうした時代の変化に対して、行政が農業の法人化といった農業政策の転換に遅れたのも1つの原因といっていい。
・食料自給率向上のためにとった政策とは?
こんな状況の中で、農水省がとった食糧自給率向上のための農業政策もあまり効果的ではなかった。
食品ロスをなくす、日本人の食生活を転換させるといったさまざまなプログラムはあったのだが、結果的にはその政策が効果的に働いているようには見えない。
例えば、政府は2015年3月に「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定して、2023年までにカロリーベースの食料自給率を39%(2013年当時)から45%に、生産額ベースでも65%(同)から73%に上昇させる、という目標を掲げた。
具体的には、食料の安定供給の確保、農村の振興、農業の持続的な発展、農業団体の再編整備といった政策を明示し、食料自給率の目標値を初めて設定した。
たとえば、力強く持続可能な農業構造の実現に向けた担い手の育成・確保・経営所得安定対策の着実な推進、女性農業者が能力を最大限発揮できる環境の整備、農協改革や農業委員会改革の実施、農村への移住・定住の促進といった項目が並ぶ。
さらには、民間企業・団体・行政等が一体となって国産の農産物の消費拡大を推進するプロジェクトを立ち上げて、食料自給率アップのために「今が旬の食べ物を選ぶ」「地元でとれる食材を使う」「ご飯を中心に野菜を使ったバランスのいい食事」「朝食の推奨」「食べ残しを減らす」といった「食育」の概念まで導入。国民の食生活にも注文を出している。
こうした「国民にお願いする」形の政策で、食料自給率の上昇は望みにくい。
抜本的な発想の転換がないまま現在に至っている。一方、食料自給率の低迷が国の安全保障に最も大きく関わっていることを、国民ももっと知ったほうがいい。
太平洋戦争においても、約230万人が戦死したがそのうち餓死した兵士が半分以上だったと言われている。
本当の意味のリスクに直面したときにどうすればいいのか……。
そうした現実に目を背けたままでは、本当の日本の安全保障にはつながらないのではないか。
今や、海外では国防も戦車やミサイルの数だけではなく、サイバーセキュリティーや食料の確保といったことに重きが置かれていると言われる。
食品ロスなどを抑えるという発想よりも、本気で安全保障を考えるのであれば、森林面積を多少削ってでも農地を増やす。
あるいは使わなくなったゴルフ場等を簡単に農地に転換するシステムづくり、あるいは都会の空き家を一定の期間を置いた後で農地に転換できるようにする、などなど……。
新しい時代に沿った画期的な発想が必要なのかもしれない。
・もし、食糧不足が起きたらどうなる?
実際に、日本で食料危機に陥った場合、われわれ国民はどうなるのだろうか……。
農水省のシミュレーションによると食料品の輸入がストップしたときには、カロリーの高い焼き芋や粉吹き芋などの「イモ類」を主食にして、毎食のようにイモを食べる「イモ類中心」の食生活を提案している。
小麦やコメは1日1杯程度に抑えてイモを代替にすることで主食を賄い、さらに牛乳は5日に1杯、焼肉は19日に1皿、卵は3カ月に1個……。
そんな食生活に切り替えていくことになるとしている(農林水産省「食料自給率及び食料自給力の検証、2019年11月」より)。
当然ながら、農地をカロリーの高い「イモ作」に切り替えることも必要になってくる。
日本の場合、食糧の7割近くを輸入品に頼っているわけだから、たとえば戦争や災害などによって、長期にわたって食料品が海外から入ってこなくなれば、当然ながら食料品が不足する。
農水省は、いざというときに備えて農産物備蓄を行っているが、次の3品目しか備蓄がない状態だ(2019年度現在)。
それもまた、民間にお願いベースでの“備蓄”が含まれている。
●コメ……政府備蓄米の適正備蓄水準は100万トン程度
●食糧用小麦……国全体として外国産食糧用小麦の需要量の2.3カ月分
●飼料穀物……国全体としてトウモロコシ等の飼料穀物100万トン程度を民間備蓄
要するに、政府が単独で食糧を備蓄しているのはコメのみ、というわけだ。
万一、海外からの食糧品が入ってこないことが明らかになった場合、可及的速やかに全国の農地でイモの栽培など、高カロリーな作物をつくり始めなければならない。
その場合、9割近くを輸入に頼っている「エネルギー」も絶たれると考えられる。言い換えれば、農作業も人力や家畜の労力に頼ることになる。まさに、半世紀以上前の世界に戻ることになりかねない。
ちなみに、日本のエネルギー自給率は、11.8%(資源エネルギー庁「総合エネルギー統計、2018年度確定値」より)。
東日本大震災の影響で低かった2014年の6.4%よりは回復したものの、世界的にみてもOECD35カ国中の34位と最低レベルの数字だ。
つまり、日本はエネルギーと食糧という国民生活に最も重要なライフラインを海外に頼っていることになる。
石油備蓄日数も、187日(2019年現在)しかないため、食料不足が深刻になって、イモ類を作らなければならないことがわかった段階で、農機具を動かすためのエネルギーが不足している可能性もあるということだ。
一方で、食料輸入先の国の事情も考えなくてはいけないだろう。
例えば農水省の資料によると、一般的な「天ぷらそば」を例に考えてみると、ソバは中国やアメリカ、天ぷらの中身であるエビはタイ、ベトナム、インドネシアなど、天ぷらの衣となる小麦はアメリカやカナダ、そしてその天ぷらを揚げる油は、カナダから主に輸入している。
天ぷらそばの食料自給率は22%にしかならない(2014年の数値)そうだ。
単純に考えて、天ぷらそば1杯にしても日本は世界中の国から、さまざまな食料を輸入して日常生活を送っているということになる。
仮に、中国とアメリカが戦争状態に陥るような地政学リスクが高まったら、日本は真っ先に食料不足とエネルギー不足に陥る可能性がある。
~~~
日本人は低い食料自給率のヤバさをわかってない~6割以上を海外に頼る状況を放置していいのか~
東京経済 2021/10/30 岩崎博充:経済ジャーナリスト
https://toyokeizai.net/articles/-/464342
■安倍政権、あまりに能天気な農業政策…輸入“超自由化”の一方、食料自給率急増の目標設定
Business Journal 2020.04.30
https://biz-journal.jp/2020/04/post_154651.html
~~~
新型コロナウイルスのパンデミックの下、日本に食糧危機が迫ってきている。
各国において大規模な移動制限と物流混乱が起こり、食料輸出国において自国の食料確保を優先するために食料の輸出制限措置が広がっている。
その動きは、小麦ではロシア、カザフスタン、ウクライナ、インド、米ではインド、ベトナム、カンボジアなどにおよんでいる。
4月1日には、FAO(国際連合食糧農業機関)、WHO(世界保健機関)、WTO(世界貿易機関)の事務局長が連名で、「食料品の入手可能性への懸念から輸出制限のうねりが起きて国際市場で食料品不足が起きかねない」と警告の声明を発表した。
さらに各国で行われている新型コロナウイルス感染防止のための移動制限が、外国人労働者に大きく依存している欧米の農業に脅威を与えている。
米国では、昨年25万人以上の外国人労働者が農業に従事していた。
欧州でも旧東欧諸国からの労働者が農業に従事している。
移動制限によって外国人労働者が農業に従事できなければ、欧米では作付けが、南半球のオーストラリアでは収穫作業が困難になりかねない。
このままでは世界の食料生産が低下しかねない。
まさに、食料自給率37%の日本に食糧危機が迫ってきている。
このようななか、3月31日に政府は、農業の基本法である食料・農業・農村基本法に基づき、5年に一度改定する新たな食料・農業・農村基本計画を閣議決定した。
計画の焦点は、37%と過去最低を記録した食料自給率をどのように設定するかであったが、新たな計画では10年後の2030年に45%という目標を設定した。
食料自給率は、5年前の基本計画でも45%が目標値となっていたが、下がり続け、2018年には37%にまで低下。
先進国で最低の食料自給率となっているが、今回の目標値設定に際しても、その低下の原因については、まったく究明されなかった。
それどころか、食料自給率低下の原因として指摘されているメガ食料輸入自由化について、是正するどころか、それを前提とした基本計画としている。
さらに、農地面積は、現在の439.7万haが10年後には414万haと減少、農業就業者は現在の208万人から10年後には140万人と3割減少との見通しで、日本の農業を支える農地と農業就業者の縮小を前提としている。
関税撤廃が国内農家を脅かす
では、そのようななかでなぜ食料自給率を10年後に45%にするという目標を立てられるのか。
それは、主要品目の以下の生産努力目標を見ればわかる(左は現在の数量、右は目標値)。
・飼料用米:43万トン→70万トン
・小麦:76万トン→108万トン
・大豆:21万トン→34万トン
・野菜:1131万トン→1302万トン
・果実:283万トン→308万トン
・生乳728万トン→780万トン
・牛肉33万トン→40万トン
・飼料作物:350万トン→519万トン
要するに農地も農業就業者も縮小するが、農産物は増産できるという能天気な予想に基づいて、食料自給率が10年後に45%になるという、まったく根拠のない想定なのである。
IT技術を活用するスマート農業によってそれを可能にするとしているが、高齢化している農業従事者でスマート農業を活用できる人は限られている。
さらに、日本農業を取り巻く環境は、メガ食料輸入自由化で野菜も果実も関税撤廃され、肉類や乳製品も関税の低減が連続的に進むことになり、圧倒的価格差のある輸入農産物の輸入拡大による農産物価格の下落で、農業経営の継続が困難になる事態を迎えている。
このような実現不可能な食料自給率目標を掲げて国民に誤った安心感を与えることはやめて、目前に展開しつつある食糧危機に真正面から対峙して、食料確保や、離農と高齢化が進む農業の緊急的なテコ入れに取り組むべきである。
~~~
安倍政権、あまりに能天気な農業政策…輸入“超自由化”の一方、食料自給率急増の目標設定
Business Journal 2020.04.30
https://biz-journal.jp/2020/04/post_154651.html
■冨永愛さんが「危機感を感じる」と訴えた食料自給率とは?「かなりやばい」と指摘されたその割合は…
2022/5/14 ハフポスト
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_627dfd89e4b0f0ea7aff3c0f
~~~
モデルの冨永愛さんが自身のTwitterで、日本の食料自給率(カロリーベース)について「かなりやばいと思う」と危機感を示したことが話題になっている。
冨永さんは5月11日、「日本が自給できているのは唯一お米のみ。それも完全に、ではない」と指摘。
「農業や畜産に関わる人たちへもっと手厚い補助や、若い世代の人たちが関われるような大きなアクションが必要だ」と主張した。
冨永さんの投稿には、13日午後5時の時点で4万5000件を超える「いいね」が付き、「世界情勢からしても、もっと日本は食料自給率を上げるべきだ」「カロリーベースだけで考えるのは不十分」といったコメントが寄せられている。
さらに、冨永さんは13日にも「カロリー、生産額、どちらにせよ、携わる人たちの高齢化や減少は問題」と指摘。
「自然災害や戦争、人口爆発などで輸入出来なくなる想定に備えなければ、これからさらに問題になる」とつづった。
食料自給率は、国内で消費する食料のうち国産でどのくらい賄えているかを示す指標。
農林水産省によると、2020年度のカロリーベースの食料自給率は過去最低の37%。
品目別では、例えばコメが98%であるのに対し、小麦は15%で多くを輸入に頼っている。
一方で、生産額ベースの自給率は67%だった。
政府は食料自給率について、30年度にカロリーベースで45%、生産額ベースで75%へと引き上げる目標を掲げているが、達成に向けて課題が多いのが現状だ。
~~~
冨永愛さんが「危機感を感じる」と訴えた食料自給率とは?「かなりやばい」と指摘されたその割合は…
2022/5/14 ハフポスト
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_627dfd89e4b0f0ea7aff3c0f
■食料自給率 38%で大丈夫?
NHK 2020/8/24 サクサク経済学Q&A 経済部岡谷宏基記者
https://www3.nhk.or.jp/news/special/sakusakukeizai/articles/20200824.html
~~~
私たちが食べるコメや肉などがどの程度、国産でまかなわれているかを示す「食料自給率」。
最新のデータがこのほど公表され、昨年度はカロリーベースで38%という結果でした。
日本は食料自給率が低いイメージがあるけど、38%ってやっぱり低いの?どうして?経済部の岡谷宏基記者、教えてください。
---食料自給率が38%ということは、食べているものの6割は輸入に頼っているということですよね。日本の食料自給率はどういう状況なんですか?
岡谷記者:
日本の食料自給率は、低下傾向が続いています。
ピークだった1965年度は73%でしたが、2000年度以降は、40%前後で低迷しています。
昨年度の38%というのは、過去最低だった前の年度からは1ポイント回復しましたが、過去2番目の低い水準でした。
政府は、ことし、10年後の2030年度に食料自給率を45%まで引き上げるという目標を掲げましたが、達成には程遠い状況です。
---コメなどは、ほとんどが国産ですよね。なぜ自給率が低いままなのでしょうか。
岡谷記者:
品目によって、自給率が大きく異なるからです。
コメをはじめ野菜や魚は、比較的自給できている一方で、畜産物やパンに使われる小麦などの自給率が低いために全体を押し下げているんです。
---スーパーに行くと国産の牛肉や鶏肉などをよく見かけます。それでも畜産物の自給率はこんなに低いんですか?
岡谷記者:
国内で育てられた牛や鶏でも食べるエサが海外から輸入したものであれば、その分は自給したとは見なされないからです。
例えば、鶏の卵は96%が国産ですが、鶏のエサとなるトウモロコシなどは海外に依存しているため、自給率は12%まで下がってしまいます。
牛肉や豚肉なども同じ理由です。
食生活の多様化によりこうした畜産物などの消費が伸びる一方で、コメなどの自給率の高い品目の消費が減っているため、どうしても全体の自給率が低くなってしまうんです。
---海外からの輸入でまかなえているんですよね?
岡谷記者:
ただ、いつでも安定的に食料が輸入できるわけではありません。
実際、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で国内の供給を安定させるためだとして、ロシアが小麦の輸出を一時、規制するなどの動きもありました。
海外で何か起きた場合でも食生活をある程度、維持できるようにしておく必要があります。
---もしも今、海外からの輸入がすべて止まった場合、どうなってしまうんでしょうか?
岡谷記者:
あくまでも想定ですが、こんな試算があります。
農林水産省によると、カロリーの高い「いも中心」に、農地を最大限活用して作付けすれば、国内の生産だけで必要なカロリーはまかなえると試算しているんです。
そのメニューがこちら。
朝食:パン、サラダ、焼きいも、リンゴひと切れ。
昼食:焼きいも、野菜炒め、粉ふきいも、煮豆。
夕食:ごはん、浅漬け、粉ふきいも、焼き魚ひと切れ。
牛乳は5日に1杯、焼き肉は13日に1皿、卵は36日に1個しか食べられません。
---毎食「いも」ですか…。
岡谷記者:
そうならないためにも食料自給率を高めていくことが必要です。
ただ、海外からの輸入自体が悪いことではありません。
さまざまな国の食材がいつでも身近にあるということは、私たちの暮らしを豊かにしますよね。
経済力がある国で食料の輸入が多くなるのは、当然のこととも言えます。
アメリカを見ても自給率が130%と100%を超えていますが、食料品の輸入額も1300億ドルを超え、世界トップクラスです。
大切なのは、豊かさを享受しながらも国内の食を安定的に維持できるよう基盤を整えておくこと、そのバランスだといえそうです。
~~~
食料自給率 38%で大丈夫?
NHK 2020/8/24 サクサク経済学Q&A 経済部岡谷宏基記者
https://www3.nhk.or.jp/news/special/sakusakukeizai/articles/20200824.html
・諸外国、地域の食料自給率等
「我が国の食料自給率は、諸外国と比較すると、カロリーベース、生産額ベースともに低い水準にあります」
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/013.html
■【アベトモ黒田日銀総裁が反日・売国であったことはご存知でしたでしょうか?】
・日銀金融緩和で刷られた円の行き先が日本企業でも日本国民でもないカラクリ