oonoarashi’s blog

日銀金融緩和で刷られた円の行き先が日本企業でも日本国民でもないカラクリ(Dr.苫米地 2016年9月15日TOKYO MXバラいろダンディ) https://www.youtube.com/watch?v=tvzNqO6qsGI

■金利上昇なら債務超過も 袋小路の日銀がいまだに金融緩和を唱える隠された理由 論座 2022年04月28日 木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 

金利上昇なら債務超過も 袋小路の日銀がいまだに金融緩和を唱える隠された理由

論座 2022年04月28日 木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

https://webronza.asahi.com/business/articles/2022042600007.html


~~~


・「インフレ下の低賃金」が定着した日本


3月の消費者物価指数が前年比0.8%上昇したのに対し、企業物価指数は9.5%も上昇した。

今は企業が物価上昇の痛みを負担している形だが、いずれ限界がきて消費者物価に転嫁される。


日本銀行黒田東彦総裁は「この物価上昇は持続しない」(4月22日の米国講演)と語るが、コロナ禍もウクライナ侵攻も長期化が予想され、物価のすう勢は変わらないだろう。


一方、今年の春闘は賃上げ率が例年並みの2%強にとどまり、「インフレ下の低賃金」の構図が定着。

生活はじりじり苦しくなっている。


円安の直接的な理由は、米国が長年の金融緩和・低金利政策に終止符を打ち、正常化とインフレ抑制に向けて強力に動き出したことにある。


米国はゼロ近辺だった政策金利を3月に0.25%上げた。

5月には0.5%上げ、年内に3%程度にする見通しだ。

金融緩和で膨らんだ保有資産を圧縮する「量的引締め」にも進む。

 

・日銀は「指し値オペ」で低金利を市場に徹底


一方、日本は9年前にアベノミクスが始まって以来、低金利と金融緩和を今も続けている。

このため日米の金利差が拡がり、投資家は低金利の円を売って金利が高いドル資産(米国債など)を買っている。

これで円安(ドル高)が進む。


ところが日銀は円安に歯止めをかけるのではなく、逆に拍車をかけるような対応をしている。


4月下旬に行った「指し値オペ」がそれである。

10年国債を利回り0.25%で無制限に買い入れるという市場操作で、「金利は0.25%以上には上昇させない」と宣言したのに等しい。

投資家は安心して一層の円売りに走った。


黒田総裁や鈴木財務相は「急速な円安は好ましくない」「悪い円安だ」と、円安を口先でけん制しているが、市場では誰も本気にしていない。

 

・発行国債の半分を保有金利上昇なら巨額の評価損


日銀や政府が、円安・物価高の原因である金融緩和の是正に動こうとしない理由はなにか――背景にあるのは、日銀の財務内容の異常な悪化である。

日銀はこの9年間、金融緩和策に沿って国債を買い続け、資金を政府と市場に供給してきた。

その結果、保有する国債残高は長期・短期合わせて528兆円に膨らみ(上のグラフ)、発行国債の約半分を占めている。


このうち長期国債(503兆円)の平均利回りは0.226%(21年度上期決算)である。

現在の市場の長期金利もこれに近い水準にある。


ところが、仮に金融正常化に移行して1%でも長期金利が上昇する(価格が下がる)と、日銀には「逆ザヤ」が発生する。

発行国債の半分を保有するので膨大な額(兆円単位)の評価損が生じる。


9年間の金融緩和で、日銀の財務は金利上昇に対して極めて脆弱になった。

この裏事情が知れ渡れば、国債も円も日銀自身も信認を失うだろう。


日銀が4月に「指し値オペ」で長期金利を抑え込んだのは、5月末の決算公表を前に評価損発生を防ぐのが目的だったという見方が出ている。

さらに7月に参院選を控えているという政治判断があったのかもしれない。

 

当座預金でも巨額の損失、債務超過の恐れ


また日銀の当座預金口座には、銀行などから、緩和されても使い道のない余剰資金が預けられている。

9年間で残高はどんどん膨らみ、541兆円に達している。


日銀が金利を上げる場合は、この当座預金に支払う金利を引き上げる手法をとる。

仮に正常化して金利を1%引き上げると、日銀の支払い金利は5.4兆円増える。

日銀の年間純利益は約1.2兆円なので、損失の垂れ流しが始まり、簡単に債務超過に陥ってしまう。


これでは永遠に金融正常化に移行できない。

これほどの金利上昇リスクを抱えた中央銀行は先進国に例をみない。


同じ問題は政府の財政にもある。

金融緩和によって国債の発行残高は1000兆円を超えた。

財務省の試算では、1%の金利上昇でも国家予算の利払い費は6、7年後に約10兆円増える。

この費用をどのように捻出するのか、こちらも深刻な問題だ。

 

・進むも退くもできない袋小路に


円安の進行を放置すれば物価は上がる。

かといって円安・物価高を抑えるために正常化(金利上昇)に向かえば、日銀の巨額の評価損や債務超過が現実になる。

政府財政もひっ迫する。


つまり今、日銀は現状放置も正常化もできない袋小路に入ってしまった。

ひたすら物価上昇が一時的で終わるのを願っている。

投機筋から足元を見られている。


日銀が毎年出す「金融政策の点検」は、エコノミストらの再三の指摘にもかかわらず、自らの財務悪化に一切触れようとしない。

国民の目からそらしているとしか思えない。


円安の元をたどれば、日本の経済停滞、国力低下という構造的な要因に行き当たる。

「日本売り」という表現が流行っている。

人口減少、貿易収支の赤字、財政規律の緩み、日銀の財務悪化等々……。


~~~
金利上昇なら債務超過も 袋小路の日銀がいまだに金融緩和を唱える隠された理由

論座 2022年04月28日 木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

https://webronza.asahi.com/business/articles/2022042600007.html