■米国が今も消費税を導入しない「もっともな理由」
PRESIDENT(2013年9月30日)岩本沙弓
https://president.jp/articles/-/10632
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財政難の米国がいまだに消費税(付加価値税)を採用していないことは、意外と知られていない。
米国が採用しているのは通称州税といわれる小売売上税で、消費税とはまったく違うタイプの税制だ。
実は、米国議会では過去何十年にもわたって、付加価値税の導入について議論が持たれてきた。
法人税や所得税に代表される直接税に比べて、消費税・付加価値税など間接税が優れているとは見なせないという理由で採用は見送りとなっている。
ちなみに、米国の国税における直間比率は9対1だ。
付加価値税の場合は特に、輸出に還付金が渡され、輸入には課税される点、法人税引き下げとセットにされやすい点などが議論の焦点となってきたことが米公文書に多く残る。
例えば法人税がなぜ有効で、消費税・付加価値税と代替させるべきではないと考えるのか。
1960年代の米財務省の報告書には、すでにこんな記述がある。
消費税は売り上げにかかるために赤字の企業でも支払いの義務が生じるが、
「赤字企業が法人税を支払わなくて済むことは、その企業にとっても経済全体にとっても有効である。たとえどんなに効率的で革新的な新規ビジネスであっても、収益構造が確立するまではある程度の時間がかかる」
とし、さらに仮に、赤字の繰り越し機能付きの法人税をなくし付加価値税を導入するほうが、付加価値税なしで高い法人税を設定するよりも企業を助けるという前提について
「これでは急激な景気後退局面では、たとえ効率的な企業であったとしても、単に一般需要が落ち込んだという理由だけで多くの企業が赤字企業となってしまう」と記す。
こうした記述を見るにつけ、米国はやはりフロンティア精神の国家なのだと認識を新たにする。
新しい挑戦の芽を潰すことはしない、それが消費税・付加価値税採用を見送り、法人税に依存する理由とするのはいかにも米国らしいではないか。
米国経済の抱える個別の問題は多々あるにせよ、主要国のなかでもベンチャービジネスが米国で隆盛するのは、1つにはこうした税制からの観点が確立されているからではないだろうか。
最新のOECD統計のベンチャーキャピタル投資額の順位では、断トツの1位が米国(267億ドル)、2位日本(16億ドル)、3位カナダ(15億ドル)となっている。
付加価値税を採用していない米国と採用しても5%と極めて低水準である日本・カナダが後に続くのも、偶然とは言い切れまい。
アベノミクスが成長戦略にベンチャー企業の育成を掲げるなら、法人税こそ引き上げ、消費税は凍結、あるいは引き下げが筋というものではなかろうか。
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■米国が今も消費税を導入しない「もっともな理由」
PRESIDENT(2013年9月30日)岩本沙弓
https://president.jp/articles/-/10632
「日本経済は消費税10%で完全に終わります」
・とんでもない愚策
ポール・クルーグマン(ノーベル賞経済学者、米プリンストン大学教授)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/40411
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・とんでもない愚策
私はこれまで安倍晋三政権によるアベノミクスを支持してきました。
金融と財政の両面から経済を刺激するというアベノミクスの戦略は、これまでどこの先進国も実行したことがない「経済実験」でした。
これを批判的に見る専門家もたくさんいましたが、私は必ず奏功すると主張してきました。
実際、アベノミクスが実行に移されてから、株価も上昇し、景気も回復基調に入ろうとしていました。
しかし、私はここへきて、安倍政権の経済政策に懐疑心を持ち始めています。
というのも、安倍政権はこの4月に消費税を5%から8%に増税し、さらに来年にはこれを10%に増税することすら示唆しているからです。
消費増税は、日本経済にとっていま最もやってはいけない政策です。
今年4月の増税が決定するまで、私は日本経済は多くのことがうまくいっていると楽観的に見てきましたが、状況が完全に変わってしまったのです。
すでに消費増税という「自己破壊的な政策」を実行に移したことで、日本経済は勢いを失い始めています。
このままいけば、最悪の場合、日本がデフレ時代に逆戻りするかもしれない。
そんな悪夢のシナリオが現実となる可能性が出てきました。
さらに、いま世界を見渡すと、先進各国の経済に多大な打撃を与える「危機の芽」が生まれる土壌ができつつあります。
日本がその大打撃から逃れられる保証はありません。
最悪の場合、世界の危機が日本経済を壊滅的に破壊する可能性すらあるのです。
安倍政権は、本当に「しでかしてしまった」というのが私の印象です。
最もやってはいけない増税に手を付けたことで、日本経済はin suspense(はらはらしている状態)に陥ろうとしています。
なぜ安倍総理はこんなとんでもない政策に手を付けてしまったのかと考えると、「間違った人々」の声に耳を傾けてしまったのでしょう。
離陸するには時速300マイルが必要な時に、「それはちょっと速すぎるから時速200マイルで行こう」と吹き込む人がいたのです。
しかし、中途半端な速度で離陸しようとすれば、飛行機がクラッシュしてしまうことは目に見えています。
実は日本の経済政策の歴史を振り返ると、経済が少しうまくいきだすと、すぐに逆戻りするような愚策に転向する傾向が見受けられます。
'90年代を思い出してください。
バブル崩壊から立ち直りかけていたところで、財政再建を旗印に掲げて、日本の指導者は消費増税に舵を切りました。
これで上向いていた経済は一気に失速し、日本はデフレ経済に突入していったのです。
安倍政権がやっているのが当時と同じことだといえば、事の重大性をおわかり頂けるでしょう。
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■ノーベル賞経済学者クルーグマン
「日本経済は消費税10%で完全に終わります」
・とんでもない愚策
ポール・クルーグマン(ノーベル賞経済学者、米プリンストン大学教授)
週刊現代(講談社)2014.9.16
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/40411
■英、大企業法人税25%に上げ 半世紀ぶり、23年から
日本経済新聞(2021年3月4日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR03E1D0T00C21A3000000/
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英政府は3日、2023年4月から大企業向けの法人税率を現行の19%から25%に引き上げると発表した。
経済が完全に再開するまで休業者支援など新型コロナウイルス対策を続ける一方、大規模な財政支出に対応した財源確保にも着手する。
休業者の給与の80%を補?する対策は9月末まで延長する。
ロイター通信によると、法人税率の引き上げは1974年以来、約50年ぶり。
引き上げは3日に英政府が発表した21年度の予算案に盛り込まれた。
英国は金融危機後、企業の投資を呼び込むために10年時点の28%から足元の19%まで法人税率を下げてきた。
コロナ危機をきっかけに法人税の引き下げ促進の方針を大きく転換した。
政府の説明によると、23年度から年間の利益が25万ポンド(約3700万円)以上の企業の税率が25%に上がる。
利益が5万ポンド以下の企業は19%の税率を据え置く。
利益がその間の企業には19%超から25%未満の税率が課される。
政府は中小企業を中心に英国の7割の企業の税率は19%のままと説明するが、大企業はほぼ25%への引き上げとなる見通しだ。
政府は3月から6月下旬にかけて段階的にロックダウン(都市封鎖)を解除する方針を掲げる。
予算案にはそれまでの支援策も盛り込まれた。
20年3月から続く休業者の給与を80%補?する対策は9月末まで延長する。
7~9月は企業に1~2割の負担金を求める。
飲食や宿泊、娯楽業を対象にした日本の消費税にあたる「付加価値税」の引き下げも9月末まで続ける。
通常の20%から5%への引き下げが維持される。
温暖化対策向けの投資資金を集めるため、個人向け環境債の発行も発表した。
コロナ対応への財政出動の結果、20~21年の政府の借入金の合計は約5900億ポンド(約88兆円)に達する見通し。
英予算責任局は政府債務の残高が当面は同国の国内総生産(GDP)を超えた状態が続くと予測する。
スナク財務相は3日の演説で法人税率の引き上げなど負担増を伴う政策について「それをやりたい財務相はいないし、人気がない政策だとわかっている」と強調した。
そのうえで「政府債務の問題を未来へ放置するのは責任ある財務相のやり方ではない」と理解を求めた。
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英、大企業法人税25%に上げ 半世紀ぶり、23年から
日本経済新聞(2021年3月4日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR03E1D0T00C21A3000000/